映画を地でいくヒーロー活動
そんなハリソン自身も、先述した映画ヒーローのような側面を持っている。彼は熟練した船乗りで、世界のさまざまな場所を航行するアクティブな行動力を持ち、また飛行家としてパイロットライセンスを取得。ヘリコプターやプライベートジェット、さらにはヴィンテージ機を含む多くの航空機のコレクションを所有している。
しかも、彼はその操縦能力を活かしていくつかの捜索救助活動に参加し、災害時の救援や行方不明者の捜索にあたったこともある。2000年には自らヘリコプターを操縦し、ワイオミング州のテーブルマウンテンの頂上で高山病に苦しむ2人の女性ハイカーを救出。その翌年にも、イエローストーン国立公園で、ボーイスカウト部隊から離脱し行方不明になった13歳の少年を救い出している。
また2017年の9月には、ニューヨーク市の路上で車両通行止めになった際、他のドライバーが回避できるよう現場で先導。同年11月にはカリフォルニア州サンパウロで、ハイウェイから転落した女性ドライバーを救っている。
いっぽうで、2015年3月には自身が飛行機事故を起こし話題となった。航空機でカリフォルニアのサンタモニカを離陸した直後、エンジントラブルに見舞われ、ベニスのゴルフコースに不時着せざるを得なくなったのだ。その際に体の数箇所を骨折しており、それらのエピソードは良くも悪くも、彼が演じてきたヒーロー像を地でいくものといえるだろう。
SFやアクションに冷たかった理由
ただ、そのような映画キャラクターと本人との同一視をハリソン自身は嫌っており、特に彼を象徴するハン・ソロやインディ・ジョーンズに関しては距離を置き、マスコミやファンに対してそっけない対応をしてきた時期がある。理由は以下に顕著で、これは1983年、フランスの第8回ドービル・アメリカ映画祭でマスコミ向けに語った言葉だ。
「僕はスター俳優ではなくてアルチザン(職人)俳優だ。でも世間からはイメージが固定され、ソロやインディでしか僕を語ろうとしない。僕は決して漫画の主人公ではないんだよ」
もっとも、そこには彼なりの戦略があり、キャリアの初期にはジャンルを固定させず、さまざまな役を演じることができる役者だと思われるようマーケティングを考慮してきた。それはブレイクが遅かった俳優の慎重さのあらわれでもあったが、結果として窮屈さを招くことにもなったのだろう。