『スター・ウォーズ』で遅咲きのブレイク
こうして大工仕事と俳優を掛け持ちしてきたハリソンだが、フランシス・フォード・コッポラ監督作である『カンバセーション…盗聴…』(1974)と『地獄の黙示録』(1979)に大工兼俳優として参加。またコッポラの弟分であるジョージ・ルーカスが監督した青春映画『アメリカン・グラフィティ』(1973)で重要なキャラクターを演じ、それらが役者としてのターニングポイントとなった。
そして1977年に再びルーカスと組み、『スター・ウォーズ』(1977)でアウトローだが頼れる宇宙の運び屋ハン・ソロを演じ、映画は空前の大ヒット。彼の知名度は飛躍的に高まった。
このときハリソンは35歳。まさに遅咲きのブレイクである。
さらに同作は『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980)『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(1983)と2本の続編を展開させた。加えて前者のラフ編集版を見たスティーヴン・スピルバーグが、彼をアクション・アドベンチャー映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)で、冒険心の旺盛な考古学者インディ・ジョーンズ役に抜擢したのだ。本作もまた大成功を収め、ハリソンの人気は不動のものとなったのである。
前掲のアクション・キャラクターを演じて俳優としての成功を得た彼は、続いて『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985)でピーター・ウィアーと、『フランティック』(1988)でロマン・ポランスキーと組むなど、作家性の強い監督の作品で演技派としてのキャパシティを大きく拡げていった。
なかでも出色はリドリー・スコットが手がけた近未来SF『ブレードランナー』(1982)といえる。演じた特捜班のリック・デッカード役は、大衆性とは対照的なマニアックでカルトな支持をハリソンにもたらすことになる。
1990年代にはトム・クランシー原作の『パトリオット・ゲーム』(1992)『今そこにある危機』(1994)で、主人公であるCIAエージェントのジャック・ライアンを演じ、スクリーン映えのするアクションと確かな演技を併せ持つ「世界でもっとも商業的に成功した俳優」としての地位を盤石なものにしたのだ。