大工で身を立てた不遇時代
『スター・ウォーズ』&『インディ・ジョーンズ』シリーズで世界的な支持を得て、ハリウッドを代表する俳優のひとりとなったハリソン・フォード。彼は従来のスターが通ってきたプロセスとは異なる形で成功をつかみ、また独自の経歴やエピソードを持つアクターとしても知られている。
1942年7月13日、イリノイ州シカゴに生まれたハリソンは、1960年に地元のメインイースト高校を卒業し、ウィスコンシン州のリポン大学に進学。4回生の最後の学期に演劇のクラスを受講して学生演劇へとのめり込み、職業俳優の道を志した。
1963年にはロサンゼルスへとわたり、ハリウッドでコロンビア映画と週150ドルのスタジオ俳優契約を結ぶ。そして1964年には『現金作戦』(1966)でベルボーイとして初めて役を演じ、夢への糸口をつかんだのである。
ところが、長い下積みを経ても一向に芽が出ないことを懸念したハリソンは、大工になって収入を得ようと決意。公立図書館で建築関係の本を読みあさり、なんと独学で技術を習得したのだ。しかもその腕前はハリウッドスターを顧客としてまたたくまに拡がり、収入はスタジオが彼に払う俳優のギャラの何倍にもなったという。
生活の支えとして始めた大工だったが、この仕事によって映画人としての創造性と自己鍛錬が得られ、また物事にあたる際の集中力と自信を得たのだと、後にハリソンは折に触れて述懐している。