美味しさだけではなく、感情面でポジティブに

「キットカット」は、シンプルな美味しさ、手にしやすさというブランドイメージ以外にも、購買意欲を向上させるブランド戦略に取り組んできた。代表的なのが2003年から開始した受験生応援キャンペーンだ。

「実は2001年当時、1958年から世界共通で使用しているスローガン『Have a break, have a KitKat.』の定義を日本国内で見直す動きがありました。そんなとき、九州のあるスーパーで、1月になると“キットカット”がたくさん売れているという話が入りました。もともとは九州の『きっと勝っとお』という方言がきっかけでして、九州地方では願掛けとして“キットカット”を購入してくれた方々が多かったようです。

ちょうどその頃、ネスレ内では『よいブレイクとは、ストレスからの解放なのではないか』と話をしていた最中だったので、“キットカット”と受験の組み合わせに可能性があるのではないかという考えに至りました。そして、受験生とその家族をサポートしたいという想いで、受験生応援キャンペーンを開始しました。“キットカット”を食べたり、持っていたりしているだけでポジティブになれる、そんな願いを込めて、受験シーズンの応援をさせていただいています。

このように“キットカット”では、商品を食べて得られる機能的な価値以外にも、感情的に心が動かされる“エモーショナルベネフィット”という価値を重視しているんです」

キットカット上陸50周年。世界で1秒間に約405本製造販売さるチョコ菓子の王様が、 売り上げ低迷期を乗り越えたきっかけは“九州弁のダジャレ”だった_2
日本郵便とのコラボレーションも。2009年より「キットメール」の発売を開始

毎年受験シーズンになると、「キット、サクラサクよ。」というメッセージとともに、受験生に対するエールを送る広告を見かける。一息ついたときのお供として、もうひと踏ん張りしたときのブレイクとして「キットカット」を手にしてほしいとのことだ。

受験生とその家族の心を掴み、「キットカット」はブランドイメージを向上させるなど大きな成功をおさめることとなった。

また「キットカット」は、これまで400種類を超えるフレーバーを販売し、わさび味、抹茶味といった、いわゆるご当地商品も販売中だ。全世界を見ても、これほど多くのフレーバーが販売されているのは、日本だけだという。

「日本には食の多様性があり、ご当地の名産品とコラボして商品化しております。観光地に行ってお土産を選ぶときに、お土産を渡したい相手を考えながら、一生懸命選ぶ瞬間は大事なひとときだと考えています。私たちとしても“キットカット”を通じてお土産選びをサポートしたい気持ちでご当地商品の開発を進めさせていただいているんです」

キットカット上陸50周年。世界で1秒間に約405本製造販売さるチョコ菓子の王様が、 売り上げ低迷期を乗り越えたきっかけは“九州弁のダジャレ”だった_3
キットカット上陸50周年。世界で1秒間に約405本製造販売さるチョコ菓子の王様が、 売り上げ低迷期を乗り越えたきっかけは“九州弁のダジャレ”だった_4
「宇治抹茶」のような王道の味わいから「わさび味」のような変わりダネまで。その数約400種類以上にのぼる