プロ棋士は何手先まで読んでいるものなのか

――若手棋士の成長は怖いと感じますか?

里見
 去年、立て続けに若い女流プロが生まれて、若い方の層がだんだん厚くなっている実感はありますね。

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藤沢 囲碁はこの4月に中学3年生になった仲邑菫ちゃんが13歳11か月で女流棋聖のタイトルを獲って最年少記録を作りました(それまでの記録は藤沢女流の15歳9か月)。
彼女は2年前に関西から東京に転籍してきて、それから同じ研究会に入って一緒にやっていますが、強くなるスピードが早すぎて……。恐ろしい存在なのは間違いないので、一緒に強くなっていかないといけないなと。

2015年にアルファ碁(コンピュータ囲碁プログラム)が誕生して、16年に世界ナンバーワン棋士を破ったんですが、当時はAIが人間のトップに勝つなんて思ってもなかったのでびっくりしちゃって。
でも今は自分が強くなるためにはAIをうまく活用していかないといけない。

世界最年少、9歳4か月でプロ棋士になった藤田怜央くんもいますし、AIで学んだ子がどんどんプロになってくると思うので、これからが楽しみですよね。

―――人間は何手先まで読めるものなのでしょうか?

里見
 どうでしょう。序盤は変化が多いので、例えば、次の手の候補が7通りあって、それぞれでまた枝分かれして……となるので合計100手くらいはあっという間に超えます。
そういう状態がずっと続いて、終盤になるとその候補が3択くらいに絞られて、詰みで1択なるという感じでしょうか。
ただ終盤で選択肢が少なくなっても、それぞれの手を深く、さらに先まで読むようになりますね。

藤沢 囲碁も同じような感じで、感覚的によくない手は排除しつつ候補が枝分かれしていくから、合わせて100手、200手ぐらいは読んでいるのかな。

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里見 でも対局中ずっと考え続けるのはさすがに集中力が続かないので、飲み物を飲んでひと息入れたり、席を立ったり、そういう“抜く”瞬間はつくりますよね。

藤沢 そうですね。お菓子を食べたり飲み物を飲んだり、相手が考えているときに少し目を閉じて休んでます。