明石家さんまはトーク力。所ジョージは…
さて、話を戻して、所さんがなぜ、今もってたくさんの冠レギュラー番組を抱え続けられるのか。
スキャンダルがなくて好感度が高いとか、トップにならずにここまで来たので出る杭として打たれなかったとかいう分析も可能だが、私が考える一番の要因は、彼の「物事を楽しむ才能」が衰えていないからだと思う。
明石家さんまは圧倒的なトークの才能があり、それを今でも生かし続けている。
それに対し、所ジョージは自らを「芸がない」と称する。多種多様な才能を持つ彼だが、突出した芸はないということを彼自身が認めている。90年代のインタビューでも「芸のない僕は動物ドキュメントに近いと思うんです。動物に求められるのは“生態”なので、そこを見せていくしかない。趣味人間として次に何をするか自分でも興味津々です」と語っている。
彼が誰よりも突出しているのは知的好奇心であり、いろんなものに興味を持って楽しむ姿を「生態」として人に見せることこそが、彼のタレントとしての矜恃なのだ。
そう考えると、今現在の地上波テレビレギュラー番組が全て「所さんがVTRを見る」スタイルなのはある意味で必然なのかもしれない。
10年前の雑誌インタビューで語っていた引退時期?
所ジョージは番組制作にもかなり深く入り込むと聞く。スタッフが彼に興味を持ってもらおうと様々な題材を持ってきて、彼もそれを楽しむ。そしてテレビ画面を通じて「所ジョージが楽しむ様」を見て視聴者も満足する。そのサイクルが今もって回っているのだと思う。
所さんは、10年前、雑誌インタビューで60歳になったらレギュラー番組を降りて引退する可能性を示唆し、話題になった。当時、引退をほぼ確定した事実のように報道した後追い記事もあったと記憶している。
しかし、今その頃のインタビュー記事を読み返してみるとちょっとトーンが違う。
「本当はレギュラーは2本ぐらいでいい。でも各番組に魅力があるんで、どうしてもねえ。今、58歳だから60ちょっとになったら一掃するんじゃないの?」「60過ぎのジジイがやるテレビなんて魅力ないもん」「そんなこと言ってもわかんないな。60半ばでヒアルロン酸たくさん打って若返るかもしれない。見た目だけ。それまで6、7年あるからテレビも変わるかもしれないしね」
そして10年後の今、彼はまだ大量にレギュラー番組を抱えている。
ヒアルロン酸を打っているかどうかはわからないが、70歳を目前に控えた今も衰えを知らない好奇心で、物事を楽しむ姿を視聴者に見せ続けている。
おそらく所さんはさらに10年後もテレビ界に居続けるであろう。魅力ある題材がある限り。
文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太