「結局、私は漫画が描きたいんだと思います」

——ここ数年で、作画環境も読書環境もデジタル化が進んで、漫画を取り巻く状況が、大きく変わったように思います。そのことをどう感じていらっしゃいますか?

自然なことですよね。私はもう紙の本をほぼ買っていなくて、うちにあるのは全部電子版なんです。電子版になったことで、絶版になった作品や過去の作品がまた売れたりもしますし、ありがたいことだなと(笑)。

でも、私が人と貸し借りをあまりしなくなった大人だからこそ、電子版だけ持っているのでもいいのかなと思ったりもします。子供のときは紙の本を友達と貸し借りするのが楽しかったですし、本の方が人におすすめもしやすい。両方あるのがいいですね。

——縦スクロールのような新しい形式の漫画はいかがですか?

まだ読み慣れてはいないですね。今までの漫画は1ページの中を自分のテンポで読んでいけばいいいうか、読者側に任せてもらえる部分がありますが、縦スクロールにはそういう余分なところが少ない感じはします。

——描く側としてはいかがですか?

“間合い”をどう作るかが難しそうですよね。でもここで一度切って、白く飛ばしてまた現れる……みたいに作ることはできそうかなと。

もし私が描くなら、1コマあたりのセリフ量が増えると思います。読み慣れていないからだと思うのですが、少ないセリフで、どんどん下にスクロールしていくとあまり頭に入ってこなくて…。「間合い付きの小説」くらいセリフが多いものを面白いと思うことが多いです。

——お忙しい日々の中で、今楽しくやっていることや今後やってみたいことがあれば教えてください。

動画を撮って編集してみるとか、いろいろなものに手を出してはいるんですけど…結局、私は漫画が描きたいんだと思います。体的に描けなくなるまで描きたいし、漫画という表現方法が斜陽に向かったとしても、私は漫画で表現するんだろうなと。

——ほっとしました。『200m先の熱』は集大成だとおっしゃったので、全部を詰め込んですっきりされてしまったら、もう描かれないのだろうか…と不安になっていました。

それはないです(笑)。『200m先の熱』には入れられないテーマで描きたいものもありますし、それも今後どこかで連載できたらなあと。これから先も、漫画を描いていけたらと思っています。