『何者でもない女の子に「Sランク執事」という
禍々しいものをぶつけてみたかった』
––––6月23日に『メイちゃんの執事DX』コミックス20巻が発売され、「メイちゃんの執事」シリーズが完結します。現時点(4月中旬)で最終話の原稿はもう描き終えていらっしゃいますか?
実はこれから打ち合わせをしてネームを描くので、まだ完結するという実感が湧いていないんですよ(笑)。
––––17年の連載は長かったですか? それともあっという間でしたか?
もう17年経ったんだな、早いなという感覚ですね。連載を始めたのが30代の半ばぐらいだったので、自分の子どもぐらいの年齢の読者に向けて描く感じでした。
小学校高学年とか、中学1年生くらいのときから読んでいる方も、もう社会人ですもんね。その方たちはすごく長く感じたと思います(笑)。
––––連載開始時、主人公のメイは中学2年生でしたね。
『メイちゃんの執事』までは高校生が主人公の漫画を描いていたんですが、もうちょっとピュアな……ピュアってなんでしょうという感じですが(笑)、まだ何者にもなっていない女の子を主人公にしよう、と。
そこに「Sランク執事」という禍々しいものをぶつけたらどうなるだろう?という気持ちがありました。
––––Aランクより上のSランク執事を、「禍々しい」と表現されるのが面白いですね。
執事にランクをつけることにしたときに、十分優秀なAランクの執事とSランクの執事は何が違うのか考えたんです。
そこで、ただ優秀なのではなくて、強すぎる武器のような人というか…使い方を誤ったらひどいことにもなるよ?という禍々しさのある人にしようと思いました。かつ、ちょっと変態にしようと(笑)。
Sランク執事は、仕えるご主人様がただハイクラスな人、有能な人では面白くないと思っているんですよ。自分が「これだ!」と思った人に仕える。主人のためなら家族すらも切り捨てちゃうぐらいの、人としてはどうなの!?みたいな変な人がSランク執事と言われるのかな、と思っています。
––––主人の側にも度量が問われますよね。最初は中2の女の子らしく頼りなかったメイが、成長していくにつれて、まず「自分がこうしたい」という意思ありきで、執事の理人にそれを実現させるために助けてもらう、という関係性になっていきました。
そうですね。最初は「理人さんを喜ばせたい」という気持ちでいたメイに、無意識のうちに「自分が関わっている人たちを助けたい」とか、「もっといい未来を掴みたい」とか、そういう思いが出てきた。で、「理人さん、それを手伝ってください」という状態まで行った。
ものすごく理人を信頼しているから、そう言えるようになったんですよね。理人も、それを汲んで「おまかせを」と言う。
長いこと描かせていただけたので、そこまでメイが成長していく流れを描くことができてよかったなと思います。
話の構造としては、理人という絶対に手が届かないであろう憧れの人……ちなみに理人はドイツ語で「光」という意味なんですが、この理人という光に、メイと剣人(理人の弟)が頑張って追いつこうとする、というふうになっているんですよ。
這い上がって、這い上がって、気がついたら光を超えている……その段階にいくまでを描きたいと思いました。理人も、いつの間にか追い抜かれていたことに驚くんだけど、それが彼にとっても最高の喜びなんですよね。