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選択肢がないとできない言い訳になる

仕事を探すための求人情報誌がたくさんある中、元受刑者に向けた求人誌がある。2018年3月に創刊された『Chance !!』。年に4回ペースで発行し、全国の刑務所や拘置所、少年院、更生保護施設などに配布している。

国内初の少年院・刑務所専用求人誌として誕生し、今年3月で創刊5年を迎えた。同誌を立ち上げた編集長であり、株式会社ヒューマン・コメディ代表の三宅晶子さん。創刊の経緯や思いなど、これまでの活動を改めて振り返ってもらった。

創刊5年。日本初の少年院・刑務所専用求人誌『Chance !!』編集長が語る再犯の現実「行き場のない人は生きるために元の場所に戻ってしまう人が多いんです」_1
少年院・刑務所専用求人誌『Chance!!(チャンス)』
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――3月で創刊から6年目を迎えました。今までになかった刑務所・少年院専用の求人誌を立ち上げ、この5年での変化はありますか?

最初は実績もなかったので、“営利目的の訳のわからないやつ”って思われていたんじゃないですかね。でも結果が出ようが出るまいが続けているうちに、やりやすい環境になってきたと思います。法務省や各所との信頼関係を築けてきて、今では行政からの相談や講演の依頼をいただけるようにもなりました。出所者の就労支援と言えば、当社の名前が挙がることも多いですね。

――求人誌を立ち上げる前は、大手企業で働いていた三宅さん。転職のタイミングでひきこもりや元受刑者の自立訓練施設を計画していた友人から「講師になってほしい」と誘われたことがきっかけだったそうですね。

自立支援団体のボランティア活動を通して犯罪歴のある方々のお話を聞くようになって、出所しても社会復帰が難しい人がたくさんいる現状を知りました。

満期釈放の場合は住む家も帰れる場所もない方が多く、出所したらとりあえずネットカフェや漫画喫茶に行くんですね。仕事を探そうにも住所がないと探せない。あっという間に所持金を使い果たし、生きていくために元の場所へ戻ってしまう人が多いんです。つまり、再犯ですね。

――身元引受人がいて帰る場所がある仮釈放と比べ、保護観察も付かない満期釈放は再犯率も高くなってしまうんですね。

この事実をどう受け止めるべきか考えていたとき、奄美大島の施設で仲よくなった17歳の女のコから「今は少年院にいます」と手紙をもらったんです。彼女は両親健在ですけど、育児放棄や虐待を受けていて人生のほとんどを施設で過ごしていました。

私は、人生って選択肢がすごく大事だと思っていて。選択肢がないとできないことの言い訳になっちゃうからこそ、彼女の人生の選択肢の一つになればと思い、「私も身元引受人になれるよ」と伝えました。そこから私の人生も思わぬ方向に進み出したんです。