刑務所は紙社会、インターネットが使えない
――ひとりの少女の身元引受人となり、2015年に株式会社ヒューマン・コメディを設立。受刑者たちの就労支援ではなく、なぜ求人誌を作ることになったんですか?
最初は非行歴、犯罪歴のある人の有料職業紹介事業としてスタートしたんですけど、そもそも当社の存在を知っている人がいない。1年半やってみて面接できたのは20人、そのうち内定者は5人くらいしかいなかったです。
――1年半で5人は厳しいですね。その期間に紹介料は入ってきたんですか?
紹介した人材が勤務3ヶ月目から紹介料をいただく仕組みだったんですけど、紹介料が発生したのはたったひとり。この事業モデルはマズいなぁと(笑)。
光のないトンネルを歩いているような気分でしたがある日、協力企業さんの会社に行ったら冊子が積まれていたんです。「工業高校向けに求人誌を作り始めたんですよ」と言われて手に取ると、当時たまたま営業していた建設系の会社が何社も載っているじゃないですか。これはいい!と思ったんです。
――求人サイトではなく、なぜ求人誌にしたんですか?
刑務所の中ってインターネットが使えないんですよ。いまだに紙社会なので、受刑者とは手紙ですし、施設の職員さんとのやり取りでさえ電話かFAXです。
――そもそも刑務所内にいる頃から就職活動はできるんですか?
施設内の就労支援制度を受けていればできるんですけど、概ね、出所の3ヶ月前から支援を開始するという施設が多くて。ところが仮釈放の準備には半年くらいかかってしまうので、就労支援を待っていたら仮釈放に間に合わないんですよ。
そこで、刑務所の制度とは別になるんですけど、帰住先や身元引受人が決まっていれば仮釈放の可能性が出てくるので、『Chance !!』を使って独自に応募してくる方が多いんです。就労支援を前倒しにする施設も年々増えてはいるんですけどね。