報酬0円からのスタート

――これまで『Chance !!』に掲載された企業は106社(2023年春号の時点)。通常の求人広告は1ページに分割で掲載されている印象ですが、『Chance !!』では1社に1〜2ページも使用。仕事内容や給与などの基本情報はもちろん、社長の人物像や考え方までざっくばらんに綴られているのには驚きました。

求人広告というより、会社紹介に近いかもしれないですね。出所する際の身元引受人になれるかどうか、寮や社宅などの住居支援、当座の生活費支援、一部日払いや前借りなど、最低限の条件が整っている企業さんであれば一度お会いして、お話させていただいた上で掲載していただくかどうかを決めさせていただいています。

社会に出ている私たちは気になる会社があればスマホなんかを使って検索すればいいし、直接見に行くこともできますけど彼らはそれができない。少ない情報だけで仕事先を決めないといけないので、『Chance !!』では代表者からのメッセージや写真も掲載して会社の雰囲気をできる限り伝えられたらと思っています。

創刊5年。日本初の少年院・刑務所専用求人誌『Chance !!』編集長が語る再犯の現実「行き場のない人は生きるために元の場所に戻ってしまう人が多いんです」_3

――掲載企業も少しずつ増えているのは、営業担当の方がいらっしゃるとか?

今は営業活動を全くしていません。創刊号の頃は、建設業界のイベントでマイクを奪って営業的なことをしましたけれど(笑)。メディアに取り上げられたときに10件〜20件くらいご連絡をいただいて、何もない時期でも月に1件、2件くらいは問合せがありますね。中には「掲載料かかるんですか‼」みたいな方もいます。

――受刑者向けのものだからタダで載せられると思う人もいるわけですね。活動資金はどうなっているんですか?

求人広告の掲載料をいただいています。ボランティアというわけではなく、株式会社としてやっています。もともと私はこの会社から報酬を得ていなかったんですけど、去年からは多少受け取るようになりました。

――制作費などの経費は補えるとしてもご自身の生活は大丈夫なんですか?

私は求人誌とは関係ない仕事をしています。納棺師をやっていて、今日も納棺の仕事に行ってからここに来ました。どちらも本業ですね。