”日本人の心”をイギリス映画はどう描いた?

“リメイク” は常に爆死リスクと隣り合わせ。黒澤明の名作をカズオ・イシグロが蘇らせたイギリス映画『生きる LIVING』は、失敗か? 成功か?_1
オリジナル版で志村喬が演じた主人公に、イギリスの名優ビル・ナイが扮した
©Number 9 Films Living Limited
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巨匠・黒澤明監督の名作『生きる』(1952)を元にした『生きる LIVING』(2022)が好評だ。先日授賞式が行われたアカデミー賞では、主演男優賞にビル・ナイ、脚色賞にノーベル賞作家のカズオ・イシグロがノミネートされた。リメイク作品としては、大健闘と言える。

オリジナルとの比較が宿命のリメイク作は、最初から分が悪い。
「オリジナルを汚さないで」とか「新鮮味がない」とか、とにかく爆死の危険性が高いのだ。

ましてや『生きる LIVING』のように“日本人の心”を描いて長年にわたり愛され続ける名作をイギリスに移して描こうというのだから、よほどの覚悟と勇気が必要だ。

しかし、少年のころにオリジナルを見たカズオ・イシグロは、「他人がどう思うかではなく、自分にとっての勝利の感覚を持つことが大切だという黒澤監督のメッセージ」を伝えたかったと、リメイクを提案。自らが脚色を担当し、構成とメッセージはそのままに美しくも深い味わい人間ドラマを完成させた。見事なお手並みだ。