ハリウッド・リメイクの難しさ
日本映画をベースにして作られるリメイクには、いくつかの傾向がある。
まずは、人生を振り返る『生きる LIVING』のように、シンプルなストーリー展開と家族、友人、恋人などとの絆や関係の再生を描く普遍的なテーマの作品。
別れた妻との再会を願う男と、見知らぬ若者の触れあいの旅を描いたロードームービー『幸せの黄色いハンカチ』(1977)を元にした『イエロー・ハンカチーフ』(2008)もそのひとつだ。
とはいえ、オリジナルの主演は寡黙で不器用で、男も惚れるいい男=高倉健。リメイク版ではオスカー俳優ウィリアム・ハートが演じているのだが、やっぱり健さんには届かない。もちろん、アメリカンテイストのロードムービーとしては楽しめるし、武田鉄矢の役を駆け出しのエディ・レッドメインが演じているのも先物買いで新鮮だった。けれど、やはり物足りなさは拭えなかった。
中年夫婦の倦怠期脱出のきっかけを社交ダンスにするという、新鮮なアイディアが日本でウケた『Shall Weダンス?』(1996)のハリウッド版『Shall We Dance?』(2004)は成功例。要因はキャスティングの豪華さだ。
もちろんオリジナルで地味な中年男を演じた役所広司も朴訥でステキだったけれど、シルバーグレイヘアになったギアさまの色っぽさも負けてはいなかった。加えて、当時バリバリに売り出していたジェニファー・ロペスがダンス講師を演じ、華やかなハリウッド映画へバージョンアップしたと思う。
ちなみに日本大好きなギアさまは、味をしめたのか『ハチ公物語』(1987)を元にした『HACHI 約束の犬』(2008)にも主演。一応、日米合作だし、ハートウォーミングな作風がお得意なラッセル・ハレストレム監督作だけど、残念ながら、亡くなった主人の帰りを待ち続けるハチ公の感動的な忠犬ぶりが伝わってこなかった。
『南極物語』(1983)をリメイクした同名作(2006)も、同じく散漫な仕上がり。極寒の地にやむなく犬を置き去りにする人間の苦悩と1年後の再会の感動ドラマだが、雪と氷河に覆われた極寒地の映像ばかりが目立って、犬と人間のドラマが希薄だった。