“デマを事実化”してしまうテレビや新聞
藤代裕之 フェイクニュースは、ツイッターなどソーシャルメディア上の問題として語られることが多いですが、問題はSNSに偽情報が流れること自体ではなく、それをニュース化するメディア側です。
僕のゼミ生の研究をベースにした『フェイクニュースの生態系』(藤代裕之編著/青弓社)では、コロナ禍で発生した国内のフェイクニュースの例を取り上げています。
そのうちのひとつが、2020年春頃に広がった「トイレットペーパー不足」に関するニュースです。
SNSのデマが原因とされていますが、実際はそれほど広まっていない話題を「デマが拡散している」とテレビなどが取り上げ、騒動は拡大しました。
それで結果として混乱を生み、トイレットペーパーの買い占めという実害が生じた可能性が高いです。
ほとんど知られていなかったはずのSNSの話題を報じたことで、それが“事実化”してしまった事例です。
嘘やデマをゼロにすることは不可能です。「嘘をつくこと」よりも「嘘がニュースになり、事実化すること」が大きな問題なのです。
デマがポータルサイトに掲載されたり、検索結果に出たりしてしまうと、世間が「ニュースなんだ」と広く認知してしまう。