“コピーした者勝ち”のネット世界
先日、東北新幹線が乗降口に車いす用の補助板をつけたまま発車してしまい、ホームにいた係員がとっさに足で外して事なきを得た、という内容の動画がツイッターで拡散されました。
この動画に関するニュースは、すぐにテレビや新聞で取り上げられました。
このような動画が出回ったとき、私はいつも元の投稿者までたどるようにしています。投稿者は「知人から送られてきた動画」であるとツイートしていました。
メディアは、本来であれば、「その知人とは誰なのか」を確認し、動画の著作権者と思われる知人に許可を取る必要があります。
きちんと確認が取れるまではニュースにしない選択をするべきですが、「ネット上でこれだけ話題になっているからいいや」と、ニュース番組やネット記事で取り上げてしまう。
今、ネットは「コピーした者勝ち」の状態です。ツイッターでバズっている動画も、コピーに次ぐコピーのそのまたコピー……が大量にあふれ、どれが元動画で誰が投稿したのかもわからない。
例えばですが、そういった動画がロシアによって工作されたプロパガンダだったら大問題ですよね。
そんなバカなことが起きるわけないと思うかもしれませんが、今、実際にフランスやイギリスで起きていることです。
動画の中で起きていることは本当なのかを検証しなければいけないはずなのに、コピーを重ねて拡散されて歯止めが効かなくなる。
それをさらに新聞やテレビがニュースにしてしまうと、“事実”としてお墨付きを与えることになります。
ネットメディアが、情報の質よりも人々の関心を集めて広告を見てもらうという「アテンションエコノミー」で成り立っている以上、この危険性はつきまといます。
どこよりも速く情報を出して、どこよりも多くのPV(ページビュー)を集めなくてはならない。
PVを競うネットメディアの世界は、不確実な情報が広がりやすい構造になっているといえます。