「1話目からこれやっちゃうんだ」(佐久間)

――林さんは藤本タツキ先生と出会ってからどれくらいになるのですか?

 彼が17歳の頃から担当しているので、13年目ですかね。

佐久間 13年目ですか。すごい。

――佐久間さんが藤本先生を知ったのはいつなんですか?

佐久間 最初に知ったのは『ファイアパンチ』ですね。『ファイアパンチ』の第1話がめちゃくちゃバズっていましたもんね。

佐久間宣行(テレビプロデューサー)×林士平(『少年ジャンプ+』編集者) 【仕事術からエンタメの未来まで】炎の20,000字対談! 1_3
『ファイアパンチ』全8巻
©︎藤本タツキ/集英社

 バズリましたね。あの第1話で彼のことを知った人が多いと思います。それまでは読み切りを紙の雑誌でしか出したことがなくて、ほぼ反応がなかったという記憶です。

佐久間 そうですよね。ご多分に漏れず僕もそうだと思います。『ファイアパンチ』は漫画好きの友達から、「これ読んだ?」と薦められて。で、第1話を読んで、「うわ、すげえな。しょっぱなからこれやっちゃうんだ」と思ったのを覚えています。
『ファイアパンチ』は最後までとても面白く読みましたけど、『チェンソーマン』が始まったときに、こっちのほうがデザインも優れているし、マンガとしての試みも新しくなっていて、数段面白くなっていると思ったんですよ。「あっ、これは編集者が才能を引き出したんだろうな」というのをすごい感じたというか。昔も鳥嶋(和彦)さんとか有名な編集者がいましたけど、やっぱりそれぞれの作家さんによってアプローチの仕方が違うんですか?

 違いますね。全員まったく違う仕事の仕方をしているので、たまに同業で飲むと面白いです。

佐久間 そうなんですね。僕の場合、芸人さんと関わることが多いですけど、例えば『ゴッドタン』で「マジ歌」という企画を作るときでも、芸人とディレクターのかかわり方はそれぞれ違うんですよ。ただ見守るだけの人もいるし、一緒にアイデアを出し合う人もいるし。

佐久間宣行(テレビプロデューサー)×林士平(『少年ジャンプ+』編集者) 【仕事術からエンタメの未来まで】炎の20,000字対談! 1_4
『ゴッドタン』テレビ東京にて毎週土曜日25時50分放送中。【出演者】おぎやはぎ、劇団ひとりほか
2023年1月3日(火)23:30~24:55「ゴッドタン 芸人マジ歌選手権」放送

 僕も作家さんによって全部変えていますね。

佐久間 それは自分のやり方というよりも、作家さんのタイプに合わせて変えるということ?

 そうです。人によっては一緒にプロットまで考えてくださいという方もいらっしゃいますし、面白いかつまらないかだけ教えてくれという方もいらっしゃいますし、本当にバラバラなんですね。だから、僕はまず聞くようにしています。「どんなふうに打ち合わせするのがやりやすいですか」って。それで、この人には厳しめに言ったほうがいいのかなとか、この人にはこういうアドバイスしたほうがいいのかなと対応を変えています。
コロナ禍になってなくなったんですけど、それまでは新年会みたいな感じで作家さんを歓待するパーティーがあって。そこで先生方皆さん一堂に会するので、僕、キャラに迷うんですよね。人によって接し方がバラバラなので、どっちのキャラでいこうみたいな感じで。だから、早めに酔っぱらったフリをしていました(笑)。