※マンガ原作を未読で、アニメ版のみ視聴している方には、キャラクターやストーリー上のネタバレを含みますので、ご注意ください。
大事なのはキャラクター? それともストーリー展開?(佐久間)
林 視聴率って本来の作品の人気と一致しないですよね。
佐久間 一致しないんですよ。特にこの10年で乖離してきましたね。熱量と視聴率は。
林 漫画はたぶんぎりぎり一致しているんですよ。アクセス数とか評判を取ったものは基本的にそれに比例してコミックスも売れているんですけど、これがもしねじれてくると迷子になりそうだという気はします。
佐久間 だから、テレビは迷子なんだと思います。
林 お金を払った人が偉いのか、それともチャンネルを合わせた人が偉いのかというのがちょっと難しい。さらにいうと、録画して観ている人が偉いのか、配信で観ている人が偉いのかという話もありますからね。
佐久間 そう、指標が難しくて。でも、いまだに視聴率の数字を見てスポンサーがつくんですよね。
林 そうなんですね。DVDにはスポンサーの広告が入らないですもんね。
佐久間 その中でどの指標をうまく組み合わせて、自分で勝負するのか、もしくは会社を説得するのかを考えなくてはいけないので、やりたいことのために何をするのかというのをうまく組み合わせられるプロデューサーじゃないと残っていけない時代ですよね。
林 漫画の場合、作家さんと話しているゴールに関しては、「コミックスの部数」にしていることが多いです。お金を払ってくれたお客さんが僕らにとっては一番大切にするべきお客さんだろうと。もちろん最初はスマホとかで無料で読んでくれて、そこからちゃんとお金を払ってくれるお客さんに変わっていくこともあるので、両方大事なんですけど、どっちが本当に一番大事なのといったら、コミックスを買ってくれた人ですよね、というのは話すようにしています。
佐久間 作品によって違うでしょうけど、無料のお客さんからお金を払ってくれるお客さんに転化するのって、作品のどの部分がいちばん大きいんですか? キャラクターなのか、それとも展開なのか。
林 これもいろいろあるんですよね。例えば『よつばと!』を読んでいても意外な展開で驚く…ってことはないじゃないですか。でも、キャラがかわいいから、お金払って買おうとなる作品ですよね。
佐久間 『よつばと!』は永遠に本棚に置いておきたい。
林 はい、ずっと手元に置くコミックスかと。『スラムダンク』とかは展開の驚きはちゃんとあるし、キャラも魅力的だから、両方な気がします。キャラ一点突破でも全然でかい部数が出せるので、「キャラだ。とにかくキャラのことを考えろ」と言い続ける人もいますけど、僕はドラマ派なんですよね。キャラよりもドラマのほうに興味がある。
でも、最終的に思うのは、キャラもドラマも大事で、二者択一ではないということです。キャラが大事なのか、プロットが大事なのかという議論もよくあるんですけど、両方大事なんですよね。どっちもずっと考え続けるしかないということはよく作家さんと話します。
佐久間 番組の場合、何で勝つかは時間帯が大きいですね。全部面白いのがベストなんですけど、例えば60分あったとして、「最後の10分のこの話題だけで番組は成り立つから、この10分に振り込んでいきます」みたいなのはたまにはやります。
特に配信の場合は一点突破したそこの部分を観てもらえる状態にならないとなかなか勝てない。リアルタイムで深夜バラエティは観られないし、ほとんど後追いなので、こういうやり方をしないと観てくれないんですよ。
逆に『トークサバイバー!』みたいにNetflixでやったりする場合は初速をつくったほうが観てもらえるというのはありますね。
――Netflixの話でちょっとお聞きしたいんですけど、すべてのエピソードを一気に配信するパターンと、毎週1話ずつ配信するパターンがありますけど、あれはどういう戦略なんですか?
佐久間 このソフトで2カ月にわたって会員でいてもらうことが大事なのか、それとも一気にキラーコンテンツにして残ってもらうのがいいのか、その違いだと思います。でも、サブスクは一挙配信だけじゃなくて、毎週提供するものに徐々に変わっていくんじゃないかな。たぶん昔のテレビの機能をサブスクは持とうとしていると思います。だから、そのうちやるんじゃないですかね、毎週のバラエティとか。
林 そっちのほうがファンが増えていく印象がありますよね。
佐久間 そうだと思います。2カ月金を払わなきゃいけないんだったら全部揃ってから観るという人が多いから、今は一気に配信するものがメインだったりするけど、たぶん徐々に連載というスタイルを各サブスク会社が取っていくんじゃないですかね。