※マンガ原作を未読で、アニメ版のみ視聴している方には、キャラクターやストーリー上のネタバレを含みますので、ご注意ください。
満場一致で決まった連載は今までに2本だけ(林)
――少し前にヒットに法則はないという話をされていましたが、実際にお二人ともヒット作を数多く手がけています。何か秘訣はあるのですか?
林 ないですね。基本的には作家さんの努力であって、あとは運かなと思いながらやっています。たまに思うのが、これって麻雀に近いのかなって。運がなくて負けが込んでいるときはどうにか自分のポジションを守って、うまくいっているときはちょっと大胆に攻めたりするところは僕の場合あって、そこはギャンブルの感覚に近い気がします。
だから、験を担ぐこともありますね。マンガの神様に嫌われたりしないだろうかみたいな感じで。
佐久間 芸能の人もそういうところはありますね。あとで運が悪くなるような行動だけは取らないようにしようみたいな。だから、残っている人はみんないい人なんだと思います。
林 めちゃくちゃありますね。
佐久間 うん。いい人が残っていくというのはやっぱりそういう理由もあるかもしれない。幸い僕もいろいろな若手の人たちと接したりして、「佐久間さんの企画で売れるきっかけになりました。ありがとうございます」と言われることがあって、たまにそこだけニュースになったりするけど、でも売れるって複合的なことですよね。1回の企画じゃないというのはわかっているから、絶対に自分の力だけとは思わないですよ。
賞レースは別だけど、芸人とか1人の人間が売れるためには、複合的な波をつくって、それが定着してはじめて売れるので。
――売れるのは時代状況や社会環境も大きく関わってくると思うのですが、そこはどうとらえていますか?
林 負け惜しみみたいな感じですけど、作家さんを勇気づける意味も込めて、「時代にかみ合わなかった」「早過ぎました」というのはよく言っていますね。自分は面白いと思っても、売れないときってあるんですよね。
佐久間 やっぱりわからないですよね。強いて言うと、過去にいい結果が出たときって、実は最初から満場一致だったってことが1回もないんですよ。世間で評価されたからみんな面白いと言うけど、会議の段階ではわりときょとんとしている人は多かったりします。
林 そうなんですよ。僕も今までの編集者人生で満場一致の連載ネームって2本ぐらいしかなくて。1本目が『青の祓魔師』で、2本目が『SPY×FAMILY』。僕も佐久間さんと同じで満場一致って怖いと思うんですけど、全員がマジで満場一致だと売れるんですよね。もう若手から上まで全員が「やられた!これはもうお手上げ!」みたいな感じのときは、スタートダッシュでバーンといくんです。あと、上司がその状態だから宣伝費がつく(笑)。1巻から宣伝費をぶち込めるんですよ。
佐久間 なるほどね。
林 ただ、逆に言うとその2本しか今までなくて、それ以外はだいたい割れているというか。『チェンソーマン』ってたぶん2人くらいしかプッシュしてくれなかった気がします。16年くらいやって、その2本しかないんだから、なかなか満場一致型のヒット作を生み出すのは難しいなという感じですよね。