創業111年目、四代目店主が最も幸せに思う瞬間

《創業111年のラーメン店》尼崎に現存する日本最古と呼ばれるラーメン店の四代目店主が味よりも大切にしているこだわり「やはり最も冥利に尽きるのは…」_5
店内ポスターの一文も妙に説得力が増す

神戸、尼崎と兵庫で100年以上の歴史を見てきた「大貫」だが、その中で「大貫」には家族で何代にも渡って来ている常連客もたくさんいる。

「私で現在四代目(49歳)になりますが、常連様の中には家族で四代・五代とご来店頂いている方が何組もおられます。子供の時におじいちゃんおばあちゃんに連れられていたお子様が成人して彼氏を連れて来るようになり、やがて『結婚しました』と赤ちゃんを連れて来てくれる…そんな常連様を見たときが、やはり最も冥利に尽きます」(創さん)

中華そばのスープは動物ベースの白湯系で、タレは100年以上追い足ししている熟成醤油ダレ。この熟成感が独特な酸味を生み、まろやかさの中にスッキリ感が加わる。

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100年追い足しの熟成醤油ダレ

創業以来、毎日毎日追い足し継ぎ足されたタレは家宝といっても過言ではない。初代の長治さんは「タレはお客様に作って頂いているようなもの。追い足し継ぎ足し出来るのは毎日毎日沢山のお客様が召し上がって下さるからこそ、また今日も継ぎ足せるのだ」とお客さんへの感謝を欠かさなかったという。

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麺は黄色いたまご麺

麺は自家製の足踏みたまご麺。足踏み製法による自家製麺は、一般的な製法に踏み込み作業を加えた昔ながらの製法だ。大正時代には主流だったとされる足踏み製法だが、現在では機械化が進み、また作業の大変さから続けている店は少ない。

「食文化は地域によって好みが大きく異なると思いますので、味に対する『絶対にこうだ』というこだわりは正直ございません。
クラシカルな製法の自家製麺や毎日継ぎ足す素ダレ、絶対に安全な食材を使用するなど、味よりもむしろ食に対する姿勢にこだわりを持っています。店名の由来の通り、『初心を大きく貫く』ことを大事にしています」(創さん)