あのバンドの名曲が着想の原点
――新作『ニーティング・ライフ』は、しがないサラリーマンの小森建太郎が20年間勤めていた会社を辞め、究極の引き籠り生活を始めるところから始まります。まずは、この題材を選んだきっかけを教えてください。
筒井(以下同) 実は、打首獄門同好会の『布団の中から出たくない』という曲が着想の原点になっているんです。「布団の中に全てあればいいのに」という歌詞があって、こういう生活が理想かなと考えを膨らませていきました。快適な生活は人それぞれだと思いますが、僕が考える一番快適な住環境は、狭い部屋の中で全てが完結していることなんです。
――作中に鴨長明『方丈記』からの引用もありますよね。
たまたまテレビをつけたら、NHKの『100分de名著』が『方丈記』の回(2012年放送)だったことがあって。それまでは、中学校の時に習った冒頭のフレーズを知っている程度でしたが、大人になって改めて共感できる内容だなと思ったんです。それで今回の作品にちょっと取り込みつつ、ネットゲームも好きなので、その要素も拝借して。
――やはり、コロナ禍の影響が大きかったのでしょうか?
コロナ以前から、ひたすら部屋に籠る話は描きたかったんですけど、たまたま色んな要素が重なって、このタイミングになりました。
――主人公の小森建太郎は、サザエさんチックな髪型がファニーで、今まで筒井さんが描かれてきたキャラクターとは一線を画している印象を受けます。
そうですね。小森には反逆心もないし、キツい目にあっても誰かを恨むでもない。
ただひたすら生活を守るってタイプですから、僕が今まで描いてきたキャラクターとは毛色が違いますよね。