室内の物語をドラマティックに
――完璧な引き籠り生活を遂行するため、小森は小さなアパートの一室にテントを張って暮らし始めます。そこから極力動かないためのライフハックも次々に登場しますが、あれは全てご自身で試されたんですか?
担当編集(ヤングジャンプ・増澤吉和編集長) 筒井先生はこの作品のために実際アパートを借りたんですよ。
筒井 そのアパートは取り壊しになってしまったので、今は更地になっていますが、ひと通り試してみました。さすがに尿瓶は試していないですけどね(笑)。
――おぉ、作品の通りですね!
もともとキャンプ道具を集めるのが好きだったので、資料として活かせてよかったです。一人用のテントの中って落ち着くんですよ。考えがまとまってくるというか。
――レトルトパウチの食品に関するライフハックも可笑しかったです。
後々ハサミが役に立つわけですが、そういう展開も考えつつ、小ネタを入れることで生活感やリアリティが出てくるかなと思って入れてみました。
――物語の前半で描かれるのはほぼ部屋の中での出来事ですが、そうとは思えないぐらい多岐に渡った絵作りをされていますよね。テントの上に部屋着が綺麗に並べて干してある感じとか、ごみの捨て方とか。それでいて、生活にぬるっと入り込んでくる不穏な気配もある。
基本的に、読者がその場所に立っているような臨場感が出せればいいなと思いながら描いています。室内の話で遠景の広い絵が出てこないので、クリスタ(イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」)で全ページを一覧しつつ、似たアングルが続いて単調になっていないかバランスも見て。web掲載なので、なるべくコマを大きく、ネームは削るようにもしています。