「追悼のために安倍さんオマージュ
でもしているのかと思ったもん(笑)」

――安倍さんに関してはすごく人気がある一方で、『安倍やめろ!』のように憎しみをぶつけやすいタイプでもあったのかなと思います。その点、岸田さんは支持率が下がっても『岸田やめろ!』となりにくいキャラのように思えますが。

そうなんですよね。何をやっても許しちゃう熱烈ファンが少ないのはいいと思うんですけど、嫌う方も情熱的になれないという面がありますよね。

――人気がないから、アンチも盛り上がれないということですね。

そう思います。叩きどころはすでに十分あるとは思うんですけど。
強引に決めた安倍さんの国葬儀問題だって、結局、批判の声は断ち切れてしまって。参列した政治学者のドレスがどうの、とかいう話に終わってしまったのはなんだかなあという感じですよ(笑)。

今思い出してみても、あのときの国葬はもっと批判されるべきでした。あの強行突破感は安倍政権の頃を思い出して、追悼のために安倍さんオマージュでもしているのかと思ったもん(笑)。

――ちょうどエリザベス女王の葬儀が重なった時期でもあり、国葬の意味を考えさせられましたよね。

実際に安倍さんを愛した人はいっぱいいたし、彼に救われたと思っている人もいっぱいいるわけだから、やっぱり“ファン葬”としてやるのがよかったんですよ。私も思想は違うけど、それだったらいいなと思えたはずなんで。
熱烈支持者には高須さんのようにお金持ちが多かったわけだから、その人たちが資金を出して国葬よりも豪華なファン葬をやったらよかったんです。

あの国葬にしたって結局、国内からの来場者は安倍ファンと自民党の政治家ばかりだったじゃないですか。結局、『国葬』という名前がどうしても必要だったっていうことなのかな? なんか、よくわかんない理由で取り行われた謎儀式だったなと思います。

大砲の音、鳴り響いてましたよね。私は国葬をやっているとき、法政大学にいたんです。国葬生中継の裏で、また白井聡さんや島田雅彦さんというまっすぐな左翼(笑)、それにシアターブルックの佐藤タイジさんというロッカーを交えて語るというニコ生番組に出演していたんですよ。

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「国葬自体は、なんでこれが可能なのかもよくわからない手続きだった」

――どんな話が出ましたか?

国葬自体は、なんでこれが可能なのかもよくわからない手続きだったし、最初は国全体として弔意を表すとか言っていたのが、だんだんと文言が変わっていったりとか、気持ち悪いものだなという話に。
そして“このままいくと、もう本当に日本やばいけど、どうする?”みたいな話をしていました。その横で、ロッカーがずっと歌ってるという(笑)。