撮影を「クローズドセット」で行うために
本番では、俳優が安心して演技できる現場作りに注意を払う。その1つが「クローズドセット」だ。
「スケジュール表に『ここはインティマシー・シーンです』と書いておいてもらって、まず人数を減らします。それでも人が多い場合は、プロデューサーやチーフ助監督から指示を出してもらいます。私は、いちスタッフですから。
そうしてセットから人が減っても、外のモニターで大勢の方が見ていると俳優は安心できないので、モニターの数も減らし、壁側に向けて、回り込まないと見えないようにします。それでも見えるときは、黒い布でブースを作ってもらいます」
カメラが回った後は、カットがかかるたびにガウンをかけたり、暑そうな場合は布団の中に氷嚢を入れたりする。監督が同意書と異なる演出をしようとした場合は、ストップをかけることもあるという。
「当日にならないと分からないことや変更があるのは、理解しています。ただ、それをやる場合は、まずはインティマシー・コーディネーターに相談していただくようにお願いしています。
現場には独特の高揚感やNOと言いにくい雰囲気があるので、俳優は流されやすい。でも作品は一生残るので、一時的な感情やプレッシャーで同意しないように心を配ります。
ただ、現場で突拍子もないアイデアを言われることは、今までなかったですね。現場に至るまでに同意に同意を重ねて、監督もそれを変更するということはどういうことかわかっているので。
一方で、俳優には、安心できる現場だからと、より協力的に向き合う人もいます。『やれ』と言われてやらされたのではなく、きちんと考えて挑めたということが、俳優にとってもやりがいにつながるんだと思います」
インティマシー・コーディネーターが入ると、視聴者にとっての性的シーンの醍醐味が減るばかり、というわけではなさそうだ。