不倫は人生が終わるほどのことなの? 『窓辺にて』今泉力哉監督の「悪」とされているものへの問いかけ_1
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フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者の妻・紗衣(中村ゆり)が若手作家と不倫関係にあることを知っても、ショックを受けない自分に戸惑っていた。そんなある日、高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)と出会う。留亜と奇妙な交流を重ねる中で、茂巳は自らの心と向き合っていく……。

不倫は人生が終わるほどのことなの? 『窓辺にて』今泉力哉監督の「悪」とされているものへの問いかけ_2

思いの差が著しい恋を描いた『愛がなんだ』、W不倫の夫婦を描いた『猫は逃げた』など、一筋縄ではいかない恋愛映画で人気を得てきた今泉力哉監督。オリジナル脚本による最新作『窓辺にて』では、妻の浮気にショックを受けない自分に思い悩む男の心の旅を描いた。

妻の浮気を知っても、案外平気かも?

「10年くらい前に、もし自分の奥さんが不倫をしたら、怒りが湧くかどうかと考えたことがあって。きっかけは……何でしょうね。別に、奥さんが浮気しそうとか、そういうことじゃなかったんですけど(笑)。浮気がどうというより、意外と平気でいれちゃうかもと思った自分にショックを受けたんですよ。それって、奥さんを好きじゃないってことなのかなと」

もうひとつ、発想の種になったのは、芸能人や政治家らの不倫のニュース。

「基本、いけないことですが、そんな、人生終わるほどのことなの?と思うくらい、断罪されるじゃないですか。それは、みんなが不倫や浮気を楽しい時間だと想像しているからだと思う。でも本人たちは意外と『やっぱよくないよね』と思ってるかもしれないし、浮気相手の立場からしたら『一緒になりたいけど、なれない』と悩んでいたりするかもしれない。世の中が悪だと決めてかかっていることに疑問を投げかけたいという思いもあって、浮気しながらも楽しい時間じゃない時間を描こうと考えました」

不倫は人生が終わるほどのことなの? 『窓辺にて』今泉力哉監督の「悪」とされているものへの問いかけ_3
インタビューに応える今泉力哉監督

こうして骨子を考え、「これは40〜50代の夫婦の話になる」と感じた今泉監督。自身が40代に近づいて巡り会ったのが、稲垣吾郎だ。「今泉作品のファン」という稲垣と雑誌の対談などで交流を深め、「稲垣さんも、きっと喜怒哀楽が激しく出る方じゃない。あの話に合う」と思った今泉監督は、10年来温めていた企画を動かした。