不倫は人生が終わるほどのことなの? 『窓辺にて』今泉力哉監督の「悪」とされているものへの問いかけ_4

普段思っていることがセリフに表れる

「苦しい現場も多い中、ほとんどストレスなく撮れた」という『窓辺にて』の撮影。そのゆるやかな空気が、俳優の自然体の演技を引き出した。稲垣への演出では、ある言葉を多用したという。

「稲垣さんは、俺の作品の温度感をわかってくれていて、大きな芝居をせず、ある種、そのままでいることを意識してくれました。ただ、それでも何カ所か、お芝居が大きくなる瞬間があって。舞台での主演や他の映像作品で求められてきた芝居と私の求めるものはかなり異質ですから、仕方ない部分もあったと思うんです。

それで、『大きいので抑えてください』と言うのも失礼かなと考えていたときに見つけたのが、『またカッコよくなっちゃいましたね』という言葉。言い過ぎて、本意に気づかれてたと思うんですけど(笑)」

不倫は人生が終わるほどのことなの? 『窓辺にて』今泉力哉監督の「悪」とされているものへの問いかけ_5

自然体の稲垣とともに、味わい深いセリフの数々が印象的だ。茂巳の「理解なんかされないほうがいいことも多いよ。期待とか理解って、ときに残酷だからさ」、タクシー運転手の「パチンコってぜいたく。時も金も同時に失えるんだから」といった、さりげなくも考えさせるセリフは、どのようにして生み出されているのか。

「メモしておいて、これを使おうという感じではなく、書きながら自然に出てきたものです。だから、普段自分が思っていることが出てるんじゃないかな。例えば、うちの奥さんは家事や育児で忙しくて、たぶん『愛がなんだ』も見てない(笑)。

でも、そのくらいの距離感が気楽でいいんです。そういうところから『理解なんかされないほうがいい〜』というセリフが出てきたのかなと思います。『パチンコってぜいたく〜』は、俺が一時期、パチンコにハマってたから(笑)。失い過ぎだろってくらい金も時間も失ったので、その言い訳として書いてたかも(笑)」

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