「字をちゃんと勉強したかったら新聞の活字を見ろ」
――あの、ちなみにこうやって話しかけても問題ないんですか?
全然大丈夫(笑)
――脳の中の別の部分でやっているんですかね。
そう言われることが多いんやけど、そういうことなんでしょうね(笑)。外で一人で書いている時とかあるでしょう。そういう時は時間がわからんようなるんですよ。腹も減れへんし、飯も食わずにずーっとやってたりね。
――没頭している状態なんですね。あ、修行の内容について聞いていたんでした。
ここをこうとか教わるんではなく、僕が書いたのに赤入れられたりね。それを見て「ああ、なんかあかんねやー」とか。その親方は「俺の字を真似しろ」みたいに言わんと、「字をちゃんと勉強したかったら看板屋が書いた字じゃなくて新聞の活字を見ろ」ゆうてた。「看板の字を真似してるうちはそんなにええ字は出てけえへんよ」って。
――そういうものなんですね。
そこから10年経っても、その時の自分を今振り返ってどうかゆうたら、なかなか厳しいもんで、いまだに完成せえへん。それでどないかしようとTwitterに動画上げたりして。
――動画をアップすることも練習という感覚なんでしょうか。
そうやって毎日描かないとあかんと思います。僕は特にね。もう一人、和泉市の板倉さんって文字書きがおって、学年でいうと向こうが一個上なんやけど、その人は割と勘のええ人で、手が調子よう動くんやけど。僕は毎日手を動かしてないとね。
――その板倉さんという方も文字書き職人なんですか?
そうそう。板倉賢治(いたくら・けんじ)さん(大阪府和泉市の看板製作会社「Kカンバン」代表)ゆうて、ずっと仲良い方がいてね、その人がやってるから僕もやめずに続けてるゆうところがあるんです。