素材の味、奥行きを味わう

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緑の皿がペリメニ、青い皿の手前がヴァレーニキ、奥がブリヌィ。他にもチキンキーウなど人気メニューがまだまだある

ペリメニやヴァレーニキといった餃子のような料理は、ウクライナやロシアなどではファストフードのようにも展開され高頻度で食べられているいわば国民食。これらを中心に据えることからBabusya REYのメニュー作りは始まり、少しずつメニューを増やしている。

「僕が、ペリメニが好きというのが出発点ですね」と裕典さん。「ただわかりやすさはやはりボルシチかなというのと、デザートも出したくて最初のメニューが固まりました」

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茹でたペリメニ。世界中に広がる餃子風の料理の一種だ

日本ではボルシチはロシア料理の印象が強いが、と話し出すと「違う違う!」とヴィクトリヤさんが笑った。

「ボルシチは、もともとはウクライナの料理だったのがロシアなどに広がりました。ペリメニはロシア料理でウクライナでもよく食べるメニューですが、これは中国の餃子が出どころだと思いますね」

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茹でペリメニは香味野菜が効いている。つるんとした食感も手伝ってどんどん食べてしまう魔性の味!

ボルシチもペリメニもスメタナという発酵乳製品と共に食べるのが定番だが、日本では手に入らないためサワークリームなどを用いて近い味わいのクリームを作って添えた。Babusya REYでは揚げペリメニも提供している。

「スメタナもそうですが、日本では手に入りにくい食材が多いですね。いろいろ工夫して仕入れています。ビーツはキロ単位で仕入れていますが、今はフリマアプリが一番手に入る(笑)。ディルは自家栽培にも挑戦中です」

調味料を多用する代わりにディルやネギといったハーブを用い、素材の味、奥行きを感じられるのがウクライナの料理。そこにスメタナで酸味・まろやかさが加わると、忘れられない美味となる。

「日本は料理に砂糖を入れることに驚きました。砂糖とお醤油の味ですよね。ウクライナでは料理に砂糖を使うことはあまりありません」

一方でデザートの類はしっかり甘い。

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トヴァローグを包んだナリースニキ。焼き立ての温かいところを食べる
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「手作りチーズのクレープ」という名前で提供しているクレープは、ウクライナではナリースニキ、ロシアではブリヌィと呼ぶ。リースは葉っぱだから、葉のように薄いということだ。このようにデザートとして食べることもあるが、ひき肉などを包んで食事にすることも多い。

包んだトヴァローグは牛乳から自作したもの。淡白なカッテージチーズのようなものだ。トヴァローグの淡白な味わいと練乳とのコラボレーションが何気ないようでいて抜群。乳脂肪分の使い方がうまい土地なのだなと感じさせられる。

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ウクライナ人客が来訪し、ベリーのヴァレーニキが懐かしいと喜んだそう

ヴァレーニキも餃子のようなもの。ウクライナではナリースニキ同様、デザート風の具にしたり食事向きの具にしたりして食べられており、Babusya REYでもキノコとマッシュポテトを具材にした食事用のメニューも提供している。

デザート風ではベリーが入ることが多い。現地ではさくらんぼを入れるそうだが、手に入りやすいイチゴでアレンジしている。

もっちりした小麦粉生地と果実の甘さ。派手ではないが思い出しては食べたくなるような、郷愁を誘う素朴な味わいだ。