「今できることをしたい」

オープンの立役者となったのは、小笠原裕典さん・ヴィクトリヤさん夫妻だ。

ウクライナ出身のヴィクトリヤさんは語学留学をきっかけに日本に暮らし、キックボクサーの小笠原さんと日本で出会って結婚した。

ヴィクトリヤさんは情勢のキーポイントともなっているドネツク州の出身。家族が戦火から逃れるため日本に避難した。今年3月から父母、そして姉と甥、さらに遅れて5月に姉婿、と合わせて5人が合流。避難民認定を受け、住宅支援などを受けて生活している。避難してきた家族は、平日は日本語学校に通っており、甥は日本の中学校に転入した。

吉祥寺のウクライナ料理店に行列。避難民家族の“日常の味”が大好評_c
左から小笠原裕典さん、ヴィクトリヤさん、エウゲニアさん、アントンさん

姉のエウゲニアさんは美容外科医、姉婿のアントンさんは運輸関係とそれぞれ手に職があるが、日本での生活のために「今できることをしたい」とレストランのオープンを決意。

「ウクライナは自炊の機会が多く、よく料理をしますからみんな料理人ですよ。ペリメニやヴァレーニキはみんなで仕込んでいます」とヴィクトリヤさん。

母のレシピそのままに、人気メニューのチキンキーウはアントンさんが担当するなど家族総出で作る、文字通りの家庭の味だ。

裕典さんは家族も近隣で飲食店を経営する根っからの吉祥寺っ子。Babusya REYが間借りするバーも裕典さんの弟が経営している。そのような背景が、入国から2ヶ月というスピード開店を可能にした。

今回の取材は、主に日本語が堪能なヴィクトリヤさんと裕典さんに通訳しながら話していただいた。