ウクライナが開発した「大砲のウーバー」

2014年、アメリカのウーバーテクノロジーによってオンラインで料理を注文し、指定した場所に配達してもらえるサービスが始まりました。日本でも2016年にサービスが開始され、コロナ禍の影響もあって、ウーバーイーツサービスは急速に発展しました。

ウーバーとは、もともとウーバーイーツを運営している企業のウーバーテクノロジーが、2009年に始めた配車サービスです。今や世界の70か国以上で事業展開されています。これは、一般のドライバーが空いた時間を使って自家用車をタクシー代わりにし、それを利用したい客とマッチングさせるシステムです(日本では、2024年4月から「ライドシェア」が条件付きで利用できるようになります)。

このウーバーのサービスを成り立たせているのと同様のシステムが、ロシア・ウクライナ戦争で使われていると、英国の『タイムズ』は報道しています。

戦争で使われているそのシステムは、通称「大砲のウーバー(ArtilleryUber)」や「戦場のウーバー」といわれています。各種情報収集手段で得られた目標情報は、大砲のウーバーシステムに組み込まれます。

実際のウーバーシステムでは、乗車希望の客に対し、市街を走る車両から最も適した車両を機械的に判断し割り当てます。

大砲のウーバーシステムも同様に各攻撃目標に対し最も効果的な兵器を割り当てるのです。いわば要求に応じて車や料理の代わりに大砲の弾を届けるというものです。

この大砲のウーバーシステムでは、各種情報源から得られたリアルタイムデータをシステムに入力し、敵の位置をピンポイントで標定します。さらに標定したデータを射撃計算ソフトで処理して、その地域に配置されている火砲、ミサイル、ドローンなどから、どの兵器で攻撃するのが最適かを瞬時に提供します。

ウーバー×マッチングアプリ…ウクライナが開発した「大砲のウーバー」がロシア軍を撃破した驚くべき仕組み――テクノロジーがもたらす新時代の戦争のカタチ_1
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指揮官は、戦場からのライブデータを表示する電子地図にアクセスし、射撃指揮ができます。指揮所で本部の要員がシステムから提供されたターゲットと攻撃手段を確認すると、どの部隊に攻撃させるかを選択し、指揮官の命令により直ちにターゲットの座標が兵器の位置に送られ攻撃が行なわれます。

ロシアがクリミアを併合した2014年頃からウクライナ軍で使われ始め、すでに砲兵部隊では広く普及しているようです。

これは、米国などが提供したものではなく、ウクライナのプログラマーが、英国のデジタ地図会社と共同で開発した状況認識システムで、正式には「ジーアイエス・アルタ(GIS Arta)」と呼ばれています。このシステムにより、火砲の射撃の照準にかかる時間を従来の20分から1〜2分へと短縮したとされます。

たとえば2023年5月11日、ウクライナ東部のシバースキー・ドネツ川を渡河しようとしたロシア軍の戦車や浮橋の攻撃に使用され、2日間の砲撃と空爆で80両以上の車両を破壊し、ロシア軍に大きな損害を与えたことが話題となりました。