敢えてレシピを統一せず
ここまで食べ歩きをして気付いたのだが、鹿沼のシウマイには「統一レシピ」というものがない。地方のB級グルメなどでは、必ずといってよいほど、「基準」とした具材や食べ方があるものだ。
「そこは敢えて、自由にやってもらう方がいいと考えて決めていません」(商工会議所の水越さん)
それが多彩なシウマイ文化を生み、いくら食べ歩いても飽きない理由になっているのだろう……と感心していると、水越さんがおかしそうに、「次は本当に驚くと思いますよ」と一軒の店に案内してくれた。
店名は「創菓工房 松屋」。お菓子屋さんがシウマイ? 首をひねりつつ出されたひと口サイズのシウマイをほおばって、驚いた。甘いのだ。同店が売り出しているスイーツ「シューうまい」という。フリースタイル・シウマイの究極だ。
同店の代表、熊倉雄一さんは「上に載っているボテっとした肉感を出すのが難しかった」と振り返る。試行錯誤の末に、マロングラッセ(栗を糖蜜で漬け込んだ菓子)を使った今の形にたどり着いた。
店舗は山間部に向かう街道の途中にあるため、ロードバイクでサイクリングを楽しむ人たちが小腹を満たすために購入することも少なくないという。たしかに疲れた体にこの甘さは心地良いだろう。
町おこしの前までは、鹿沼市内にシウマイを提供するお店は5店しかなかった。それがみるみる輪が広がり、今は50店以上に。「かぬまシウマイマップ」という店舗案内の地図も作られるようになった。
「町の皆さんが乗ってくれたことに、本当に感謝しています」(水越さん)
きっかけは商工会議所からの依頼だったかもしれないが、店側もやるからには町を盛り上げたいという気持ちがある。ラーメン店「山いち」の山市敦子さんは、「鹿沼が注目されることは嬉しい。どんどん情報発信していきたい」と意気込む。「かぬまシウマイ」の挑戦はこれからも続いていく。
(写真撮影/伏見学)