混乱はSNSのデマではなく「政府の情報発信の失敗」

今回の混乱は、SNSのデマでも、市場の失敗でもなく、政府の情報発信の失敗によって引き起こされたものだ。

中東にて戦争が起きた直接の責任は日本政府にはない。だがその後の情報整備の責任は、外交・産業政策・資源調達のすべてを一手に把握できる立場にある政府だけが負うことができる。

「他国よりマシ」「政府はよくやっている」という評価で甘やかしても、企業にも消費者にも何の益もない。過剰な批判も生産的ではないが、政府に対して求めるべきことは明確だ。必要な情報を、必要なタイミングで、具体的に出すこと。それだけである。

ここで外交の話に踏み込まざるを得ない。今回のホルムズ危機で日本が選択肢を持てなかった背景には、高市首相の外交姿勢の問題が深く関わっている。

高市氏は政調会長時代の2022年、ロシアから入国禁止指定を受けた際、SNSで「上等やないかいっ。招かれても行かんわい!」と発信していた。外交のトップとなった今、その気質はそのまま外交姿勢に引き継がれている。

高市氏、政調会長時代の「上等やないかいっ。招かれても行かんわい!」発信
高市氏、政調会長時代の「上等やないかいっ。招かれても行かんわい!」発信
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現職自衛官が在日中国大使館に侵入し逮捕される事件が起きた際、政府は「誠に遺憾」という言葉で済ませた。中国側は「在外公館への警備責任を果たしていない」と反発し、外交摩擦の口実を与えてしまった。

高市外交が失ったもの

また米国・イスラエルがイランを攻撃した局面では、数日のうちに民間人犠牲を理由としてイランを名指しで非難した。

米国の攻撃には「法的評価は差し控える」としながらイランだけを名指しする姿勢は、みずから窓口の一つを閉じる結果となった。戦後日本がやってきた米国とイランへの折衝外交はどこにいったのか。

国と国との間にトラブルは必ず起きる。しかし、どれだけ激しく対立しようとも、いつかは停戦の話になり、和平交渉が必要になる。

現代においてメディアの目が世界中に行き届いている以上、どちらかが完全に消えるまで戦い続けるなどという結末は現実的にあり得ない。つまり、相手が誰であれ、効果的な対話のできるパイプを常に確保しておくことは、国家の基本的な義務である。

今、日本が進めている軍備や開発の意味も、ここから問い直す必要がある。和平交渉のテーブルに相手を引き出すための抑止力としての軍備なら理解できる。

しかし高市氏の言動を見ていると、軍備や同盟を「相手を制圧する道具」あるいは「戦争に勝つための武器」として使っているように映る。