足りているのか、足りていないのか

ホルムズ海峡封鎖当初、「6月にナフサが枯渇する」という警鐘を鳴らす人が出た。それからしばらく経つ。あの予測は外れた、と鬼の首を取ったようにSNSで叫ぶ声がある。「全然足りてるじゃないか」「騒ぎ過ぎだった」と。しかし、その指摘は、問題の本質を見ていない。

ナフサ関連製品が底をつかなかったのは、通常であれば流れていたどこかへの供給を、各プレーヤーが意図的に絞ったからだ。これは「年金は破綻しません」「日本の財政は破綻しません」というのと構造が同じである。

原料の減少分に合わせて供給を制限すれば、確かに枯渇は先送りできる。しかしそれは問題が消えたことを意味しない。痛みをどこかに転嫁しながら、延命しているに過ぎない。

ナフサは、原油を蒸留して得られるガソリンに似た無色透明の液体(粗製ガソリン)。プラスチック、合成繊維、合成ゴムなどの「石油化学製品」を製造するための最も基礎的な原料であり、現代の生活に欠かせない重要な石油製品
ナフサは、原油を蒸留して得られるガソリンに似た無色透明の液体(粗製ガソリン)。プラスチック、合成繊維、合成ゴムなどの「石油化学製品」を製造するための最も基礎的な原料であり、現代の生活に欠かせない重要な石油製品
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目詰まりの現場で何が起きているか

政府のヒアリングはあくまで伝聞である。実態は現場に出れば即座にわかる。食品などの工場では、容器やフィルムの異常な価格改定や出荷制限がすでに始まっており、直近では物流に使うPPバンドの供給にまで制限がかかった。

あるメーカーから届いた案内文にはこうある。「中東情勢の影響によるPPバンドの出荷規制に伴い、供給不足が見込まれます。つきましては、現在の2本掛け仕様から1本掛けへの変更を、5月生産分より順次実施いたします」。

PPバンドとは、段ボールを束ね、物流の最前線で使われるごく地味な資材だ。しかしこれが絞られれば、食品の出荷体制そのものに影響が及ぶ。

石油化学産業の川上で何かが起きれば、その波紋は川中・川下へと静かに、しかし確実に広がっていく。枯渇という劇的な事態は起きていないかもしれないが、日本経済のあちこちで、じわじわとした毀損が進行している。そしてその被害は弱い立場の企業ほど大きく出る。

ではなぜ、このような「目詰まり」が起きたのか。