問題の本質は「情報」と「外交」の設計にある

それは隣国を刺激する軍拡競争への道だ。啖呵を切ることに国益はない。必要なのは、喧嘩を売られても冷静に対話の糸口を探し、粘り強く交渉を継続する忍耐力だ。

ホルムズの危機において、日本はイランとの独自パイプを活かせる立場にいたはずだった。しかし、首相自らがイランとの対話回路を閉じてしまった。

日本政府の失敗は二つある。一つは、危機に際して企業・市場が判断できるだけの情報を出せなかったこと。もう一つは、エネルギー調達において外交的な選択肢を複数持てていなかったこと。

PPバンドが不足している物流の現場から見えるのは、石油化学の川上で起きた小さな乱れが、静かに、しかし確実に日本の産業・物流・食卓へと波及しているという事実だ。「枯渇しなかった」と胸を張れる話ではまったくない。

情報を出す、対話を続ける。この二つの基本を取り戻すことなしに、次の危機にも、またその次の危機にも、日本は同じ轍を踏むことになる。

文/オオサワ・キヌヨ 写真/shutterstock