『エクソシスト』の真実
じつはアルツハイマー病のように、病気が脳に影響を及ぼしたり、脳の異変が患者の精神や言動に影響を及ぼしたりする例は少なくありません。
ここで、いくつかご紹介します。
1973年公開のホラー映画『エクソシスト』は、少女が悪魔に取り憑つかれ、常軌を逸した行動をとる姿を描き、世界中に衝撃を与えました。この映画が実話に基づいているとわかり、多くの人々を恐怖に陥れたことはご存じの方も多いでしょう。
映画のモデルとなったとされる少年は、人格の変化、幻覚、妄想、奇妙な体の動き、そして理解不能な言葉を発するなど、まさに「悪魔に憑かれた」としか思えない症状を呈したと言われています。
この少年については、後に詐病の可能性も指摘されていますが、一方で、実際に悪魔憑きのような症状を呈する疾患も知られています。
それが「抗NMDA受容体脳炎」という病気です。
抗NMDA受容体脳炎は、自己の免疫が脳の神経細胞にある「NMDA受容体」という部分を攻撃してしまうことで発症します。
NMDA受容体は、記憶や学習、感情、行動など、脳の重要な機能に深く関わっています。
この受容体が攻撃されると、脳の働きが混乱し、まるで脳が乗っ取られたかのような症状が現れるのです。
抗NMDA受容体脳炎の患者は、人格が突然変わったり、幻覚や妄想を見たり、意味不明な言葉を叫んだり、てんかん発作を起こしたり、体が勝手に動いたりすることがあります。
まさに映画『エクソシスト』の少女が見せた症状と驚くほど酷似しているのです。
文/下村健寿













