すべては「小さな異変」から始まる
アルツハイマー病は、最初は「あれ? 昨日何食べたっけ?」「さっき言われたことなのに思い出せない……」と、ごく最近の出来事を思い出すのが難しくなったり、慣れた道でも迷子になってしまったりする症状から現れます。
そして病状がさらに進行すると、だんだんと遠い昔の記憶までたどれなくなったり、適切な言葉が出てこなくなったりします。
記憶の地図はますます曖昧になり、やがて道や建物の認識、時間の感覚、場所の認識、そしてついには愛する人の顔さえもわからなくなってしまう、という悲しい現実が待っています。
まさにアウグステ・Dが夫の名前を忘れ、被害妄想にとらわれ、「私は迷子になった」と繰り返しつぶやいたようにです。
記憶に関係したこういった症状は「中核症状」と呼ばれています。文字どおり認知症の核となる症状であり、多くの人が認知症と聞いてまず思い浮かべるものです。
さらに病状が進むと、中核症状に加えて、まるで性格が変わってしまったかのように見える「行動・心理症状」(専門的には「随伴症状」とも呼ばれます)が出現します。
これは単なる物忘れでは片付けられない、より複雑で、周囲の人々を困惑させるような行動として現れます。
家中を徘徊したり、暴言を吐いたり、あるいは家族に対して根拠のない被害妄想を抱くようになる、といった行動がこれに相当します。
行動・心理症状は患者さん本人だけでなく、介護する家族にとっても大きな負担となることが少なくありません。
ですから、中核症状を認知症のサインとして、私たち自身や家族の身に起こりうる変化を理解しておくことが非常に重要です。
早期に気づき適切な対応を始めることが病気の進行を遅らせ、生活の質を維持する上で大きな意味を持つからです。













