遺伝子変異させた賢いマウス
新しいことを学ぶたびに、その知識によって脳の神経ネットワークの数と複雑さが増します。その結果、知的な能力が高まります。この「学習・記憶・知能」のつながりは、プリンストン大学の生物学者ジョー・Z・チェン博士が行った画期的な実験によって明らかにされました。
チェンは脳の受容体の一つに対する遺伝子を変異させ、ふつうのマウスの胚のDNAに挿入しました。場所は海馬を選びました。ここは記憶を最初に記号化する部位だからです。こうして新系統のマウスが生まれ、ドギーと名づけられました。
ふつうのマウスの神経細胞を刺激すると、受容体が通常0.1秒ほど活動します。ところが遺伝子変異したマウスでは、受容体が0.25秒も活動しつづけたのです。この余分の0.15秒が、わずかですが重要な変化を引き起こしました。
変異遺伝子を挿入されたドギーは記憶力だけでなく、知能も高いことがわかったのです。マウス用の能力試験で、ドギーはふつうのマウスより速く学習することができました。その中に水迷路試験というものがあります。不透明な水を入れた水槽の中に、やっと息がつける程度の小さな足場をつくり、マウスを泳がせます。
マウスは泳ぎながら見えない足場を探さなければなりません。そして何度か試すうちに足場の場所を覚えるのです。この試験で、ドギーはつねにふつうのマウスより優秀でした。ドギーは好奇心も旺盛で、ケージに新しいおもちゃを入れると、たいへん興味を示しました。













