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教育歴不足が認知症のリスク要因となる

国際的な専門家からなるランセット国際委員会の報告によると、認知症には12のリスク要因があることがわかっています。

12のリスク要因とは、「15歳までの教育歴不足」「難聴」「頭部外傷」「高血圧」「飲酒」「肥満」「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「大気汚染」「糖尿病」です。リスク要因のうち、オンライン習慣と密接に関わっていると考えられるのは、「15歳までの教育歴不足」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」です。

日本は中学校までが義務教育ですから、「15歳までの教育歴」という条件は、すべての人が満たしているはずです。

しかし、スマホ等のデジタル機器を使用したオンライン習慣によって、教育の「質」が低下してしまう可能性があります。

スマホ等のデジタル機器をたくさん使っていた子どもたちは、学力が低く脳の発達が止まっていました。つまり、小・中学生までの期間にスマホ等のデジタル機器を使っていた子どもたちは、「15歳までの教育」が十分になされていないという見方ができるかもしれません。

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教育歴不足が認知症のリスク要因となる理由として、「脳予備能」「認知予備能」という仮説があります。

「予備能」とは、老化や損傷などによって脳が病理的に変性してしまったときに、脳の機能を保つ防御的な能力、耐性のことをいいます。

「脳予備能」は、脳の物理的な大きさ(容積、重量など)がもたらす耐性を指します。単純に、脳の神経細胞の数や神経細胞のつながりの数が多く、脳が発達している人ほど、脳の変性に対して耐性があるということです。

「認知予備能」は、認知機能の高さ、教育歴、知的な職歴、充実した余暇活動、運動習慣などがもたらす耐性を指します。元の認知機能が高く、日頃から知的な活動を通して脳を使っている人ほど、脳の変性に対して耐性があるということです。

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病による脳神経の変性が原因で、引き起こされる認知機能の障害です。

一方で、神経病理的にはアルツハイマー病になっていたとしても、認知症の症状が見られない患者さんも存在するのです。このような、アルツハイマー病になっても認知症を発症しない人たちは、「脳予備能」や「認知予備能」が高いということがわかっています。

オンライン習慣によって、脳が本来発達するはずのところまで発達しきらなかった子どもたちは、「脳予備能」が低く、それだけ将来の加齢にともなう脳の萎縮に対して脆弱である可能性が考えられます。

また、成人期のオンライン習慣によって、前頭前野を使わない生活習慣を送っている人たちは、「認知予備能」が低く、脳の萎縮に対して脆弱であるといえるでしょう。

このように、オンライン習慣が学習の質を低下させ、脳の萎縮への耐性を下げてしまい、将来の認知症リスクを高めてしまう可能性があると考えられます。