「金太郎、陥れられる。」(集英社文庫・コミック版9巻収録)

社内にバラまかれた不倫スキャンダル

スキャンダルが表に出た時、人はまず自分の身を守ろうとする。会社での立場、世間体、これからの出世。とくに不倫疑惑のような話なら、なおさら「自分は悪くない」「誤解だ」と言いたくなるものだろう。

だが『サラリーマン金太郎』第88話で金太郎が最初に気にしたのは、自分ではなかった。

この回で金太郎は、出張先の盛岡で若い女性・千秋と行動をともにしたことを写真付きで暴かれる。温泉での写真まで使われ、「出張先へ愛人同伴!!」という社内怪文書がヤマト建設中にばらまかれてしまう。会社員としては最悪の展開だ。

しかも話はただの男女関係では終わらない。千秋はカントリーウィスキー川井会長の孫娘であり、当初は隠されていたその顔も、第2弾の怪文書で晒されてしまう。ここまで来ると、これはもうゴシップではなく、人の人生を潰すための攻撃である。

社内では、金太郎が次期トップになるのではという声まであった。普通のサラリーマンならまず、自分の立場を守ろうとするはずだろう。だが黒川社長に呼ばれても、金太郎は一切言い訳をしない。周りに突っつかれても、「一番重要なのは相手の女性の名誉を守ることだけです」と言い切る。

もともと喧嘩っ早く、一直線な男だが、ただ自分の正しさを押し通すだけではない。自分の軽率さで相手が傷つくなら、そこを最優先で何とかしようとする。だからこの回の金太郎は、不倫疑惑で追い込まれる男というより、スキャンダルの中でも守るべきものを見失わない男として映る。

だがその千秋が、何者かに攫われてしまう。そのとき金太郎がどう動くのか。その男気を、ぜひ漫画で読んでほしい。