加入する健康保険による「格差」とは
宋 そうですね。私は今50歳ですが、この数年、友達が続々と乳がんにかかっていて、手術や抗がん剤治療の後に数年間継続して非常に高価な薬を飲み続けなければなりません。だから、治療自体も大変ですが、医療費でも苦労をすることになります。
ある友人の場合は大きい会社の健保組合で付加給付もあったのでかなり助かったようですけれども、もしも高額な支払いが延々と続けば途中で治療を諦めてしまう人も出てくるかもしれません。
西村 付加給付といえば偶然なんですけれども、僕の妻が今月上旬に10日間ほど入院して手術をしたんですね。2月28日に入院して3月2日が手術、退院は9日だったので、3月分は高額療養費制度が適用されて自己負担が約8万円。2月は月が違うので1日分の費用を支払って、合計で10万円少々。僕は国保ですけれども彼女は企業の健保組合で付加給付もあるので、本人負担分は結局2万円になったんですよ。さらに、入院中と退院後の自宅静養期間も、休職中は健保組合から傷病手当金が支給される。
もしも僕が同じ病気で入院したとすると、国保は付加給付がないので自己負担の約8万円は全額支払わなければならない。しかも、傷病手当金もないから、仕事を休んでいる期間はただ収入がない期間が続くだけ、という状況になります。
宋 それって、大きい健保組合だから手厚い付加給付があって、傷病手当金も支給される、ということですよね。たとえばIT業界などは人口構成が若くて医療費を使わない人も多いから、健保の経営も比較的健全だし、病気に罹らないための予防医療などで医療費を減らす取り組みのモチベーションも上がりやすい、という話を聞いたことがあります。
そうすると、構成員が若くて伸びている業界や組織の健保は傷病手当や付加給付が手厚くて、一方ではそのような手当が何もない中小企業の協会けんぽや、個人事業主とかフリーランスの加入する国保との格差がどんどん大きくなる。
官僚の人は付加給付があるじゃないか、ということもよく指摘されます。でも、官僚だって天下りしたらどうなるかわからない。引退後も一定期間は保険の任意継続をできるようですが、それも2年程度ですよね。
西村 健保組合の付加給付は、企業や組織が自分たちの医療保険制度を手厚くしようと努力して頑張っている仕組みだけど、官僚の場合は給料から天引きの保険料が原資とはいえ、その給料の原資は税金なのになぜ付加給付があるのか。
宋 そこの不公平感はよく指摘されることですよね。官僚の人たちは高給ではないので、そういう制度があっても別にいいとは思うけど、そういう制度に恵まれていて痛みのわからない人たちによって決められてしまうのはおかしいよなぁ、とすごく思います。
西村 完全に他人事として扱っているような印象がありますよね。
宋 そもそも保険料を払う時点で、給料の高い人はたくさん払っているじゃないですか。でも、高額療養費は前年度の所得で区分が決まるから、病気で働けなくなったりして年収が減っても区分は前年度のままで、さらに高額な支払いがのしかかってくる。
しかも、本の中で説明されているように、転職すると多数回該当はリセットになるので、がんなどの病気になったり、不妊治療をして働き方を変えたりして年収が下がってしまう場合の想定はしていないですよね。高額療養費制度は非常に大切なセーフティネットなのに、まずそこに手をつけようとするのは、やっぱりどう考えてもおかしい。














