凍結はどこへ? 水面下で進む“負担増”の実態

「現時点でもすでに経済的負担のために治療を控える、あきらめている患者さんがいます。高額療養費の見直しでさらに増える可能性はあるかと考えます」

4月2日、参議院厚生労働委員会に参考人として出席した天野慎介・全国がん患者団体連合会(全がん連)理事長の話に委員会室は静まり返った。

高額療養費制度は石破前内閣が編成した2025年度当初予算案で自己負担限度額を最大で月76%引き上げる方針が示された。

だが当時の石破首相は結局、患者の声を聞かない改定の非を認め「私の判断が間違いだった」と陳謝し凍結した。

3月19日、国会前で高額療養費負担限度額の引き上げに反対しシュプレヒコールを上げる医師ら(撮影/集英社オンライン)
3月19日、国会前で高額療養費負担限度額の引き上げに反対しシュプレヒコールを上げる医師ら(撮影/集英社オンライン)
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「ポスト石破を決めた党総裁選で、当時の高市候補はメディアのアンケートに対し限度額を『引き上げるべきではない』と答えています。

しかし、高市政権が発足した後の昨年12月に、厚生労働省は引き上げる内容の改訂を決めました。

見直しは、26年8月に限度額を一律に引き上げ、27年8月には所得区分を現行の4から13に細分化して限度額をさらに見直す内容です。

年収650〜770万円の所得区分では、⽉額上限は現⾏の8万100円から最終的に11万400円へと約38%増える内容です」(政治部記者)

改定では、年4回以上の制度利⽤者の負担上限を⼀定額に抑える既存の「多数回該当」制度を維持し、年収200万円未満の所得区分の人はこの仕組みでの支払い上限額が引き下げられた。

また現役世代には年間上限負担額(年収650〜770万円で53万円)が新たに設けられた。

これについて高市首相は2月の衆議院本会議で、「高齢化や高額薬剤の普及などにより高額療養費が増加するなかで、持続可能性の確保と長期療養者や低所得者へのセーフティネット機能の強化の両立を目指して見直す。具体的には専門委員会での議論も踏まえ年間上限の仕組みを新設する」と発言した。

2月24日の衆議院本会議で高額療養費制度に関して答弁する高市早苗首相(写真/衆議院ホームページの動画より)
2月24日の衆議院本会議で高額療養費制度に関して答弁する高市早苗首相(写真/衆議院ホームページの動画より)

実際にセーフティネット強化になるのか。

全国保険医団体連合会(保団連)の本並省吾事務局次長は、厚労省の資料を基に「多数回該当の対象にならない年3回以下の制度利用の患者は約660万人で、全利⽤者の約8割を占める」と指摘する。

いっぽうステージ4の肺腺がんで闘病中の水戸部ゆうこさん(51)は、「私は長期療養者ですが、標準治療の間に治験薬による治療をはさんだり、体を休ませるため薬を入れない“休薬”をしたりして(1年間の治療回数が4回に達せず)多数回該当から外れることを経験してきました。だから全然配慮になっていない」と訴える。

2月19日、厚生労働省の担当者(写真手前)に高額療養費負担限度額引き上げの撤回を求める水戸部ゆうこさん(撮影/集英社オンライン)
2月19日、厚生労働省の担当者(写真手前)に高額療養費負担限度額引き上げの撤回を求める水戸部ゆうこさん(撮影/集英社オンライン)