本人の前で言ってしまった「死ぬんやで?」
脳にがんが転移してめまいとふらつきを訴えている母に、「俺のために運転しろ!」とわめきたてる父。そんな父への強い怒りと、このあとに起こるだろう激流のような早さで進む日々への恐れ、そして、事態をわかっていない父や姉妹たち家族にことの推移を説明しなくてはいけないことへの負担感。
このとき、自分自身が感じている悲しみもあいまって、私は半泣きになって怒鳴ってしまいました。
「あんたら、何もわかってない! このあと、どれだけ事態が早く進むか、わかってない! 残された時間は本当に少ないんだってこと、わかってない!!
もう、この人(母のこと)、死ぬんやで? もう、何週間かで死ぬんやで!? もう死ぬ人に向かって運転しろとか言わんといて。そんなん、もう無理やから。もうね、この人、死ぬの。すぐに死ぬの。びっくりするくらい早いんやから!!!!」
「死ぬ死ぬ」と何度も泣き怒りしながら口にしてしまったのです。
まあ、本人の前でこんなこと言うのは、本当はだめなんです。
本人の前で、「死ぬ死ぬ」と言うのは、やってはいけないことなんです。
緩和ケア医として、私も「正解」を答えるなら、「『死ぬ』という言葉をご本人の前で言ってはいけません」と言うと思います。
でも、まあ、世の中に正解はないのも事実です。
あの両親には、「ちゃんとはっきり話さないと理解しない」「あの人たちのキャラクターを考えると、はっきり言わないとだめだ」という思いもあっての行動でした。
これくらい言ったところで落ち込む母でもありません。
そしてその予想どおり、実際にあとから姉に聞いた話ですが、母はまったく落ち込んでなくて「アタシ、死なないわよ」と言っていたそうです。
「大丈夫。もっと言ってもよかった」が、今でも思う本音です。













