男性用風俗で働いて見えた、「客は大差ない」という実感
本を執筆すると決め、女風店の経営者や人気セラピスト、元スタッフなどへの取材を重ねて考えを巡らせる中で、その疑問は避けて通れないものになっていった。そして藤谷さんは、ある選択をする。
「私は女性用風俗の客だったことはありますが、男性用風俗の現場を見たことはなかった。もちろんサービス内容や価格帯などが違うことは調べればわかるけど、それ以外で女性用風俗と何がどう違うのか、本当に違いがあるのかはわかりません。現場を見ること=知ることではないけれど、自分の中で“実感”が持てなければ、それについて書くことに踏み込めないと思ったんです」
編集者の反対を押し切り、藤谷さんは男性用風俗で働き始める。そこで得たのは「女性用風俗の客としての自分も、自分が接客する男性たちも、大差ない」という結論だった。
「男性のお客さんも、性欲が先走ってはいるけれど、大抵はそれなりに“配慮”がある。こちらの身体を心配するような素振りを見せる人もいます。むしろそっちのほうが負担に感じることもあったり。あくまで私個人の体感ですが、客としての自分とあまり変わらないように感じました。それなりに気持ち悪いけど100%悪ではないという意味です」
本書の中で、この見解を聞かされたセラピストの男性は「オレもそう思う。女も男も、風俗に行く人って『寂しいから』が一番大きいんじゃないかな。でも男は、それを認めるのがむずかしい」と語っている。
「私がSNSやメディアで『男性はどうして風俗に行くんですか』と問いかけると、男性と思しきアカウントから『そんなの当たり前だ!』ってキレ気味のコメントが結構付くかもしれません。当たり前なら怒らなくていいじゃないですか。もしかしたらこの記事にもそういうコメントが付くかもしれないですが、タップして送信する前に『あれ? なんでムカついてるんだろう?』って、ちょっと考えてみてほしいですね」
最後に、「また女風を使おうと思いますか」と尋ねた。
「今はたまたま使っていないですが、また使うこともあると思います。『行かなければよかった』とは思っていない。ただ、楽しかった記憶と、これは搾取じゃないのかという問いがずっと同居しているんです。お金を介してケアを受けることの心地よさと後ろめたさは、どちらか片方だけにはならなかった。その両方を抱えたまま書いたのがこの本です」
取材・文/斎藤岬
◾️藤谷千明(ふじたに ちあき)
1981年山口県生まれ。主にサブカルチャー分野で執筆を行う。著書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎文庫)、『推し問答! あなたにとって「推し活」ってなんですか?』(東京ニュース通信社)、共著に『すべての道はV系へ通ず。』(シンコーミ ュージック・エンタテイメント)、『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』(ロフトブックス)、『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)などがある。













