ミサイルだけでなく「法の隙間」を突いた攻撃も

地理的な距離感もまた、日本が「他人事」でいられない決定的要因です。

日本の最西端である与那国島から台湾までの距離はわずか約110㎞にすぎません(東京から高崎までが約100㎞)。現代のミサイル戦や航空戦において、この距離は侵攻可能の範囲です。中国が台湾への着上陸侵攻や海上封鎖を行う場合、台湾周辺の海空域における優勢確保(航空優勢・海上優勢)が必須となります。

その作戦範囲は必然的に日本の排他的経済水域(EEZ)や領空と重なり、自衛隊の活動領域や米軍基地(嘉手納、佐世保など)が攻撃対象になる可能性も高いのです。

しかし、私たちが警戒すべきは、ミサイルが飛んでくるような「有事」だけではありません。より現実的で厄介なのが、平時と有事の境目が曖昧な「グレーゾーン事態」です。

例えば、武装した漁民(海上民兵)が「避難」を名目に尖閣諸島や与那国島に上陸したり、海底ケーブルが「事故」に見せかけて切断され、通信や金融インフラが麻痺したりする事態です。これらは国際法上の「武力攻撃」と即座に認定されにくいため、自衛隊は防衛出動ができず、警察権(海上保安庁・警察)のみでの対応を強いられます。

相手はこの「法の隙間」を突き、戦わずして日本の社会機能を麻痺させる「ハイブリッド戦」を仕掛けてくる可能性が高いのです。

戦域が日本の領土・領海を含み、さらに社会インフラまでもが標的になる以上、日本が中立を保つことは軍事地政学的にも、現代戦の性質上的にも、極めて困難です。法的な手続きを経るか否かに関わらず、日本は構造的・物理的に紛争の当事者として巻き込まれざるを得ない立場にあります。