中国の太平洋進出を塞ぐ「蓋」となる台湾
では、なぜ台湾の運命が日本の国土への危険と直結するのでしょうか。その物理的な理由は、地図を見れば明らかです。
日本はエネルギー資源(原油・LNG)のほぼ全量を輸入に依存しており、輸送ルート、いわゆる「シーレーン」は台湾周辺海域に集中しているのです。
台湾有事が発生すれば、これらの海域は直ちに戦闘区域になり、商船の航行は不可能になります。輸送船がインドネシアのロンボク海峡などを経由して太平洋側を大きく迂回する場合、輸送コストの激増と輸送量の激減により、日本の経済活動は数週間で窒息状態に陥ります。
すなわち、台湾の喪失は日本の「経済的生命線」が他国の意志によっていつでも切断され得る状態、言い換えれば生殺与奪の権を握られる状態を意味するのです。
さらに、もし、台湾が中国に併合されれば、中国海軍は太平洋への直接的な出口を手に入れ、日本のシーレーンを完全に掌握することが可能になります。台湾は、いわば中国の太平洋進出を塞ぐ「蓋」のような存在なのです。
中国が台湾統一を急ぐ理由は、単なる「中華民族の偉大な復興」という政治的スローガンだけではありません。そこには、米軍に対抗するための軍事合理性が存在します。
最大の狙いは、「聖域」の確保です。
中国はアメリカ本土を攻撃可能な弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を持っていますが、現在の拠点である浅い海(黄海や東シナ海)では、高い対潜能力を持つ日米の哨戒(しょうかい)網に捕捉されやすく、太平洋に出る前に封じ込められてしまいます。
しかし、台湾の東側(太平洋側)は、海岸からすぐに水深数千メートルの深海が広がっています。もし台湾を手中に収めれば、中国の原潜は誰にも探知されることなく深海へ潜り、太平洋のどこからでもアメリカ本土を狙えるようになります。
これにより、中国はアメリカに対して「もし中国を攻撃すれば、確実にアメリカ本土も核報復を受ける」という恐怖を突きつけ、アメリカの介入を躊躇させることができるのです。
つまり、中国にとって台湾を獲ることは、アメリカと対等な核超大国になるための最終条件なのです。だからこそ、習近平政権はリスクを冒してでも、この「蓋」をこじ開けようとしているのです。












