資産家の間でシンガやマレーシアへの移住や長期滞在を模索する動き

資産家の間ではシンガポールやマレーシアへの移住や長期滞在を模索する動きが珍しくなくなっている。円建てで生活し円建てで資産を持ち続けるリスクを本能的に理解しているからだ。円安を称賛しながら円から距離を取る。この矛盾こそが円安政策の本質である。

そこに日本固有の弱点、人口減少が重なる。すでに実質1.8人の現役世代で1人の高齢者を支える構造に入っている。この状態で物価高、実質賃金低下、社会保険料増が同時に進めば、子どもを産み育てる余力は急速に失われる。少子化は価値観の問題ではない。算数の問題だ。

それでもなお円安を容認し外向きの支払いを優先する。その結果、国内の耐久力は削られ富裕層は外へ出ていく。これは成長ではない。逆回転である。

だからはっきり言う。

これは「起きるかもしれない戦争」ではない。すでに戦争状態に入っている世界の中で、日本がどう削られていくかという話だ。

戦争か否かという言葉遊びの横で、エネルギーは陣営ごとに流れ始め、円は売られ、生活コストは上がり、請求書は静かに積み上がっている。

日本にとっての敗北は、戦場ではなく家計と通貨から始まる。

問われているのは戦争か否かではない。

この国が、ブロック化する世界の中で、次の有事に耐えられる状態にあるのか。
それだけだ。

文/木戸次郎 写真/shuttersrock