お金や育児の不満が義理の両親に筒抜け
「貴子さんの実家に行きたくない理由、教えて頂いてもいいでしょうか?」
「妻の父親が苦手なんです」
と言い、「これは妻にも言っています」と付け加えました。
繁さんが貴子さんの父親が苦手な理由は、一番はその生き方なんだそう。
「妻の父は働いていないんですよ。遺産の不動産収入があるのと、株である程度稼いでいるので。そういう生き方もあるんでしょうけど、妻が子どもの頃はそれだけでは生活していけなくて、お義母さんが頑張って働いていたそうなんです」
繁さんは「それもありなんでしょうけど」と言った後、
「でも義父は僕に対して『もっと頑張って稼がないとだめじゃないか』と言うんです。働いてない人がですよ? 失礼だと思いませんか?」
と、顔をしかめました。そして続けます。
「妻も『お父さんのあの発言はおかしいと思う』と言ってくれていますが、妻は妻で、お金の事でお義母さんに愚痴を言ってるみたいなんです」
繁さんは一度ため息をつき、さらに続けます。
「お義母さんから『貴子にお金の苦労させないでね』って言われた事があるんです。確かにうちは裕福ではないですけど、妻も働いていますし、苦労なんかさせてません」
「なぜ貴子さんはお母さんにそんな話をするんでしょうか」
私が尋ねると、繁さんは吐き捨てるように言いました。
「確かに、転職する前は貴子よりも僕の方が給料は安かったですけど。でも、貴子は僕の悪口を言いたいんだと思います」
「悪口?」
私の質問に、繁さんは苦笑しながら答えます。
「妻は、僕と夫婦喧嘩になると実家に帰るんです。毎回じゃないですけど。帰らなくてもお義母さんに必ず電話します。内容は聞こえないけど、僕の悪口でしょうね」
それは、嫌だろうと思いました。自分の聞こえない所で妻が実家の両親に自分の悪口を言っている。繁さんが貴子さんの実家に行きたがらない理由の一端が見えました。
「どんな事で喧嘩になるんですか?」
「一番は僕の帰宅時間ですね。転職したばかりで、今、頑張りどころなんですよ。妻も転職には賛成したし、帰る時間が遅くなるのは話してあったんです。でも、『料理をしながら子どもの面倒を見るのが大変だから早く帰って来て欲しい』って仕事中にも頻繁にLINEが来るんです。仕事中なのでいつも返事が出来る訳じゃないのに、返事しないとそれも怒るんです。
でも、おかしくないですか? 妻の両親から、もっと働け、もっと稼げって言われているから頑張ってるのに。あと、朝起きない事も文句を言われますね。でも、夜中の2時3時に帰るので、朝6時半に起きろって言われても厳しいですよね」
確かにそれはきついかもしれません。それでは、と私が話を終えようとすると繁さんが口を開きました。
「一番嫌なのは、妻の両親から、結婚して妻の性格が変わった、と言われる事です」
「性格?」
私が尋ねると、繁さんは頷き、
「『うちの娘は結婚前はもっと明るい子だった』とか。『いつも悩んでるみたいで心配だ』とか。『実家に来る時も電話でもいつも泣いている』とか。僕のせいみたいに言われるんです。だから妻の実家に行けばまた色々責められるだろうと思うので、行きたくないんです」
それはきっとそうだろう、と思える理由でした。
「今は育児を手伝えない状態ですか?」
貴子さんのワンオペになってしまっているとしたら、彼女の負担はかなり大きくなっているはずなので、私は確認しました。
「平日は難しいですけど、休みの日は出来る限り子どもと過ごしています。貴子が一人で出かける時間も作っているし。朝も、頑張って起きて子どもの準備を手伝うようにはしています」













