「だから、この結果見て、みんなほっとしているよ」
こうした鬱屈した空気を一変させたのが、「連立離脱」という決断であった。実際に、連立離脱直後の2025年10月12日に行われた地方選挙では、その効果が表れた。
例えば長野県安曇野市議選では、公明党候補が前回を上回る得票数で当選。三重県志摩市議選でも、候補者2位で当選を果たし、絶対得票率が上昇傾向だ。
先の幹部は、内部の空気をこう代弁する。
「だから、この結果見て、みんなほっとしているよ、きっと」
これは何を意味するのか。自民党との連携に嫌気がさし、投票所から足が遠のいていた、あるいは公明党から離れていた支持層が、「私たちの公明党」が戻ってきたと感じ、再び積極的に支援する姿勢に転じた可能性を示唆している。
自民党は50議席以上を失う可能性
SNS上では批判に晒される一方で、公明党の足元である地方組織では、確実に士気が上がり、それが結果となって表れ始めていたのだ。
一方で、連立の相手方であった自民党、そして高市早苗総裁は、厳しい現実に直面している。高市氏の掲げる「愛国」や保守理念にかける情熱は、深く敬意を表すべきものだ。しかし、政治は理念だけで動くものではない。
政策を実現するためには、異なる意見を持つ人々との対話と調整、そして信頼関係という名のパイプが不可欠である。今回の離脱劇は、高市氏とその周辺に、この最も基本的な政治技術が欠落していたことを冷徹に暴き出した。
連立離脱による自民党のダメージは計り知れない。次期衆院選では、公明党の協力票(小選挙区で1万~2万5000票とされる)を失うことで、50議席以上を失う可能性があると試算されている。
特に、公明党の組織力が強い都市部では、壊滅的な影響も懸念される。高市氏の理念がどれほど高潔なものであっても、それを実現するための議席という土台そのものが崩れ去ろうとしている。
高市氏の路線を真っ直ぐ進めば、党内リベラル派からの抵抗が強まり、変節すれば保守層から見放される。理念と現実の狭間で、自民党は出口のない迷路に迷い込んだかのようだ。