「かっこいい=木村拓哉」を生み出したテレビ
テレビに映る芸能人は「普通の人とは違う」。きれい・かわいい・おもしろい・歌や演技がうまい――そういった芸能人が芸能人たる評価は、必ずしも明確ではない。そんな中でテレビでは例えば、“かわいい”を「目が大きい」「顔が小さい」といった、誰にでも共有できる尺度に置き換えたりする。
一方で、“かっこいい”にはこれといった共通尺度がない。とりわけ男性芸能人においては、何を基準に“かっこよさ”が成立しているのか定義されてこなかったように思う。
そこで木村拓哉である。30年あまり「かっこいい」を更新し続けてきた彼は、果たしてどんな尺度で承認されてきたのか。
木村は近頃、主演映画『TOKYOタクシー』のPRもあって、いくつかのテレビ番組に出演している。そのひとつが、11月20日放送の『秋山ロケの地図』(テレビ東京系)。町の人が白地図に書きこんだ「行ってほしい場所」に、ロバートの秋山竜次とゲストが訪れる番組だ。
行き先はランドマークだったり、名物店主がいる飲食店だったり、時には個人宅だったりする。地元の人たちとの素朴な交流や、そこから生まれる予想外の展開が人気の番組である。
そこに出演した木村だったが、、番組内で彼の「ランク」の高さと番組とのミスマッチがしきりに強調されていた。たしかに、この手の長時間のロケ番組と「木村拓哉」というビッグネームとの間には、明らかなギャップがあるのかもしれない。しかも、木村がテレビ東京の番組に出演するのは約10年ぶりで、単独出演は初だという。
この特別感を盛り上げるように、小雨が降るなかでのロケにもかかわらず、秋山は番組冒頭でこう煽る。「地球の天気なんてどうでもいいですよ。それ以上のこと起こっちゃってるから」。キムタクは、地球すら上書きする存在なのである。
興味深かったのは、木村に遭遇した一般の人たちのリアクションだ。カフェの女性店員は「いやいやいや」と驚きの声をあげ、「近っ、キムタク!」と興奮する。定食屋で木村の後ろに座っていた男性客は「すげぇな、後ろにキムタクがいる」と感嘆し、自宅でピーマンの肉詰めを用意していたお父さんは、まさかの木村の来訪に汗だくになる。



















