自民党内からも「ついていくのが馬鹿らしくなる」の声
両院議員懇談会では、高市氏の責任を問う声は表だって出なかったという。しかし、自民党の一部で“高市執行部”への不満が高まっていることは否めない。
「(新総裁が)高市氏でよかったのか悔やまれてならない」
鹿児島市内で10月11日に行なわれた会合で、こう述べたのは、野村哲郎元農相(81)である。公明党の連立離脱について、「高市氏に対するアレルギーがあったのでは」と振り返り、「一度壊れたものは元には戻らない」と指摘した。
自民党は公明党と連立を組んだ1999年以降、選挙では“公明票”の助けを借りながら勝利し、国会では自公で過半数の議席を確保することで、円滑な国会運営を実現することを基本的な戦略としてきた。
その26年にわたる積み重ねが、突如として壊れた衝撃は大きい。
日経新聞は10月10日に、次の衆院選で公明党の選挙協力がなければ、自民候補の2割が落選するという分析を報じている。ただでさえ少数与党という状況だったが、公明党の離反により、国会での過半数確保に向けた多数派工作のハードルも高まった。
本来なら自民党が一致結束して取り組むべき難局だが、同党のベテラン衆院議員はこう指摘する。
「あれだけ露骨な論功行賞で党役員人事をやられたら、ついていくのが馬鹿らしくなるでしょう。総裁選で支援を受けた麻生太郎元総理を副総裁に起用し、その義弟・鈴木俊一元財務相を幹事長に据えた。その上、副総裁特別補佐に、コロナ禍の銀座クラブ通いで“銀座三兄弟”の異名を持つ松本純元国家公安委員長を起用。松本氏は現職ではなく、ただ単に麻生氏の一番の親友というだけですから……」
党役員人事では麻生派や、茂木敏充元幹事長(69)に近しい人材の登用が目立ったことから、小泉進次郎農相(44)を支援したグループとは、大きな“溝”が出きてしまったと指摘される。その反省からか、小泉氏を防衛相、林芳正官房長官(64)を総務相へ起用案が報じられている。
別の重要閣僚経験者は、こうため息をつく。
「本来なら、公明党に土下座してでも関係を再構築すべき場面です。しかし、公明党の連立離脱が決まった直後に、自民党が公明候補のいる小選挙区に独自候補を擁立するという報道が出るなど、高市氏の周辺に『むしろ公明に出て行ってくれて清々としている』といった雰囲気すらあるのが怖い」