金の切れ目ならぬ票の切れ目は縁の切れ目 

ただ、熱心に選挙応援に取り組む会員たちは「自民党がお金に汚いせいで私たちまで巻き添えにされている」。

選挙に大きなメリットがあるから構築した自公連立が気づけば、選挙の足手まといになっていた。

まさに金の切れ目ならぬ票の切れ目は縁の切れ目だ。

「これは単純に票数だけの問題ではない。クリーンというのはうちの女性部にとっては絶対に譲れない価値観であって、政治とカネの問題で沈みゆく自民と一緒に沈むのはごめんだ」

これが今回の決断の本当の理由だ、と学会関係者が説明する。

加えて、もう一つ大きな理由がある。それは2023年11月のカリスマ・池田大作名誉会長の死去にあるという。

自公連立をはじめたのは池田氏だった。その池田氏が死去する前に、連立離脱を切り出すことは誰もできなかった。池田氏が亡くなったことで、こうした大きな政治判断を集団指導体制と言われるいまの執行部でまとめることができたという。

26年ぶりに公明は野に下る。自民党と組む前の公明は細川連立政権や新進党へ参加した与党時代に野党自民党から激しい「政教分離」の攻撃を受けた。

池田大作名誉会長の国会招致への動きなどで公明を揺さぶり続けた。公明はそのときのトラウマがあり、自民に接近。そして自公連立が生まれたと言われている。

野に下っても自民や政権与党との関係は一定保っていく方針 

「野党になってすべて(自民に対し)敵方になるわけではない」

斉藤代表はそう語っている。野党になっても自民に対し、完全に敵対するわけではない。

公明・学会は、創価学会初代会長の牧口常三郎氏が治安維持法違反で逮捕されて、その後に獄中死。2代会長の戸田城聖氏も投獄された経験を持ち、3代目の池田大作氏も大阪の選挙違反で逮捕・勾留(その後に無罪)された経験を持つ。

3代にわたり、代表が国家権力に「迫害」されたという認識を持つ会員は主に高齢者に少なくない。

野に下っても自民や政権与党との関係は一定保っていく方針だ。それは公明・創価学会の防衛本能と言えるだろう。

そして自民はどうなっていくか。公明の連立離脱によって選挙協力を解消されたことで自民は次の選挙で50議席ほど減らすという試算も一部で取りざたされている。公明は自民との選挙協力もすべて白紙ではなく、公明の選挙への貢献度から協力度合いを決めていくという。

始まりあるものには終わりが必ずある。「26年目の熟年離婚」によって日本も本格的な多党制の時代に入った。

戦国時代のような群雄割拠のなか、選挙制度改革など新たな政治システムが生まれるのか。それとも、ただ混迷が深まるのか。日本政治は大きな時代の分岐点に、いままさに突入した。

文/長島重治